「永遠のなかまはずれの国」 永野のりこ (美術出版社)



 永野のりこをまともに読んだのは初めてでした。
 タイトルが良かったのと、エッセイマンガがつまってる感じが情報量多そう、と思って手にとってみたのだけど、一番最初の絵物語に、ボロ泣きしました。この寓話にこめられた諦念とせつなさと「ここではないどこか」「どこでもないかなた」へのはるかなる憧れに、どうしようもなく撃ち抜かれました。実在しないあこがれの向かうはて。
 わたしたちはどこだっていつだってその「キラキラした」ものを求めずにはいられない。それはいつもどこかにあるようで、そこにあるのが見えるようで、でもどうしても手に入らない。手にしたと思った瞬間にそれは蜃気楼のように消え失せてしまう。どこにもないけれどどこかにあるはずのあれ。あこがれてやまないもの。わたしたちは、それを求めて、本を手にとり、マンガを読み、ライブに出かける。それがきっとそこにはあると信じて。それが本当はどこにもないことを知っていても。
 というわけで、これ一作でも買う価値ありです。ああ、まだせつない。
 この本は永野のりこのデビューからこれまでの小さな作品を集めた一種「お蔵だし」的な本なので内容自体はバラエティにとんでまとまりはないです。しかしながら、コミッカ?ズに連載された「マンガってイイよな!」とかマンガ描きの生声を読めた感じで面白く、また「だんだん『ハハ』になってゆく」も泣けた(赤毛のアンのマリラの台詞が引用されるあたりとか)です。色々読めて、少なくともわたしには入門編として良い一冊でした。もう少し永野のりこを読んでみたいですね。やっぱ「すげこまくん」かな?

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