「THE WORLD」(1) 獣木野生 (徳間書店・キャラコミックス)


 
「PALM」で知られる旧名・伸たまきの新シリーズ。どういう話かというのは公式サイトを見ていただくのが一番かと。「PALM」は終わるんですか、とか不安もあるのだけど、これはこれで読ませます。このひとのマンガは、感覚的な部分が多いので、同調できるひとはするっと入れて、そうでないひとにはさぞかしつまらない理屈ばかりのマンガに見えるのではないかと思うのですが、これはそれでも読みやすいほうではないかな。
 絵について。私は伸たまきは「PALM」の「星の歴史」くらいの線が一番好きだったので、どんどん細く綺麗になっていくのがちと寂しい。この話でもホワイト・ワイルドとブラック・ワイルドがあの頃の太めの線で描かれていたらもっと嬉しかったかも。あと、このひとの絵もお話と同じくらい感覚的なものなので、好き嫌いがあるかもしれないなあ。
 お話は、作品舞台からして篠原烏童を連想したけれど、違うのは、本質的な残酷さ。ホワイト・ワイルドの「俺に文句を言っても無駄だ」という台詞に象徴されているように、神という、人間とは別個の存在が持ちえている人間との視点のずれがちゃんと存在していることがすごい。だからこの話は哀しい。「おまえの世界へ帰れ…」という言葉が現すように、両者の世界はまったく違うものなのだ。それが自然と人間の世界の差にも見える。人間とは無力なものなのだな…。
 かといって重い部分ばかりではありません。ホワイト・ワイルドとブラック・ワイルドは可愛い。この二人の無頓着なじゃれあい漫才も楽しめます(笑)。「PALM」ファンならもちろん買って損なしだし、彼女の世界の入門編としてもおすすめの一冊です。しかしこれもいつ完結することになるんだろう…。

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