「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスン(ハヤカワ文庫)



 有名な本は、いつしか読んだつもりになっていてそのまま読まないでいるということが多いのだけど、これも危うくその仲間入りをするところだった。有名な本や映画ってそういうことが多い。批評や噂や情報だけですべてを見た気になってしまって、本物に触れる機会がなくなってしまう。でもそれってずいぶん勿体ないことなのよね。
 入手したのはずいぶん前。速読のわたしには珍しく、ゆっくりゆっくりと読んでいたのだ、だって読み終わるのが勿体ないくらい、面白かったんだもの!嬉しいなあ、ひとつの世界に抵抗なくするっと入り込める読書の快感は久しぶりのような気がする。わたしはSFに関しては、80年代初頭日本SFオンリー(筒井康隆・星新一・小松左京の御三家は神様です)の世代なので、洋モノは「どうもその…」な印象があったのだけど、いやなんのその、本当に面白いものにはジャンル関係ないのだね!使用用語は正直云ってかなりよく分からない(笑)でも、堪能しました。
 きっとお好きなかたにはなにをいまさらギブスンしかも「ニューロマンサー」てキミイ、なアウトオブデイトな物云いなんだろうけど、いいのさ、だってわたしがこの本に出会ったのはいまなんだもん。小道具がどうとか文体がどうとかそういうことでなく(黒丸尚の訳文は大好きだ。好きな翻訳者はあと浅羽莢子と深町真理子。村上春樹も好き)、ただ単純に話の筋をハラハラして追うことが出来たのが嬉しいんだ。そしてもちろんそれだけでなく、くっきりと残るビジョンと感傷も忘れてはならない。せつないなあ。駄目じゃん。この快感を忘れてたなんて。もっともっと本を読まなきゃ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする