「リンダリンダラバーソウル」大槻ケンヂ(新潮文庫)



 80年代後半に吹き荒れた「イカす!バンド天国」を発端にしたバンドブームについての自伝的エッセイ。わたしはこのムーブメントまっさかりの頃は、僻地在住だったもので、その空気はなんとなく感じた、というレベルに過ぎないのですが、それでもあの時代を知ってる人間として思うこと多い本でした。オーケンだからこそ書ける一冊だと思います。バンドブームこそが、新旧交代のジョイント役を果たした大役、との指摘はうなずけるものがあるし。ふと思うのは、筋肉少女帯て、いまの時代にインディーズにいたらもっと楽だったんじゃなかろうか、ということでありますが。楽、というか、続けられたんじゃないかな…とか。
 あと、デーモン閣下がこういう本を書いたらものすごく面白いだろうなと信者なら誰でも思うことを思いました。この時代のことを書かれたら、やっぱり聖飢魔llのことは考えずにはいられない。Xを好きだったひとはXのことを思うだろう。そういう風にあの時代の空気を思い出さずにはいられなくする本です。しかし閣下はあれで文章を書くひとではないので(「我は求め訴えたり」は間違いなくわたしのバイブルですけど)難しいだろうな。なによりも、あのコンセプトをいまだ保ち続けている限りは。

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