「園芸家12カ月」カレル・チャペック(中公文庫)



 ずっとまとまった本を読む時間もなかったので、食事のときなどに一章ずつ大切に読んできました。チャペックといえば、かの「R・U・R」(「ロボット」という名称を初めて使用した戯曲)で有名な作家ですが、これはその作家の園芸家としてのエッセイ集。12か月を通じての園芸家の生活が自嘲と皮肉を交えて、ユーモアたっぷりに表現されてます。
 わたしは園芸にはまったく疎い人間なのですが、なにかにのめりこんだ人々というのは、要するに「俺と同じ目をしている」わけでして、なんだかとっても良く分かりました。おかしいなあ、これは1920年代にチェコで出版された本のはずなんだが。どうしてこういう熱情はいともたやすく時代と国境と人種をひとまたぎするのか。ああプラハの春。とにかく、文章が良いです。これは翻訳の力が大きいのでしょうが、こういうのを馥郁たる文章というのかな。自然の植物の伸びやかな成長や、愛らしさを語る文章がリリカルかつ本当に、巧い。なので、コミカルに語る部分も面白いのだけど、ところどころに静かに挿入されるシリアスな語りが、深いところまで響いてくるようです。
 あと作家の実兄が描かれたというイラストもすごく可愛いです。Tシャツとかグッズのイラストになってたらと思うくらい、シンプルキュートなのです。で、あんまり関係ないんですが、作家の名前で検索をかけたら、東京の吉祥寺にある紅茶店のサイトが見つかりました。そのまま作家から名前を取ったらしいけど、紅茶その他が色々と気になります。とくにSWEETS。うさぎのビスケットが可愛いよう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする