「ヘルシング(6)」(平野耕太・少年画報社)



お話はぐいぐいと進んでいく。そしてアーカードは休んでいる。いえそんなことは小さなことですが。
 さて、平野耕太の絵はやたらめったら情報量が多い。なので、見た瞬間からなにが描かれているかを把握するまでに少し時間がかかるトロい人間はわたしだけだろうか。全体の印象がまず見る側に襲いかかるように飛び込んできて圧倒したあと、余韻のように細部の情報がその印象に統合されていくような。実はストーリーもそれに似て、一見、勢いがあるようなんだけど、実は細かな伏線を秘めつつゆっくりと段階を踏んで進んでいる。ただし的確に挿入される決め台詞や場面場面のカッコよさのおかげで、冗長なものにはならない。それらのポイントの確かさは、もうこれにシビれないひとは「そりゃ向いてない」のひとことで終わってしまうような、あざとさすれすれのものだ。この巻でいうならばアンデルセンの出番が白眉でしょう。そこにある宗教的な意味は度外視してね。これ、覚えて絶叫するオフとかありそうだもの(すでにあったら失礼)。もちろんわたしは大好きです。このケレン味。たまらんね。
 それにしても漢なマンガだなーと思う。この歳になって男向け女向けと分けるのは馬鹿らしいが、これは男のマンガだと思う。ペンウッド卿のくだりとか、ベルナドットとセラスのとことか。こういうの憧れるけど、女子はなかなかここまで臆面もなく書けないのではないか。女子はリアリスティックな生き物だから。だけどわたしはその臆面のなさをカッコいいと思います。そこに男のロマンを感じます。
 

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