「幼年期安部清明異聞ー未明の獣」九条友淀(学研・ピチコミックス)



 ルパン同人だった頃(いまでも続けてらっしゃるようです)から、大好きだった作家さんです。いわゆるいま流行りの清明モノ、ということで、どうかなあと思ったんですが(わたしは岡野玲子御大の清明があれば他はいらない人間なもので)、いや充分に楽しめました。美しい線と、観念的に積み上げられていく台詞が効果的な作品です。
 個人的には、同時収録のボーイズラブもの(なのか)「STATION」」がすごく良かった。コンビ別れする漫才師の話。電車がホームに入ってくる冒頭から、二人の手が離れていくラストまで、12ページしかないのに、二人のこれまでの関係と離れなくてはいけなくなったもどかしさが充分に伝わる構成が見事です。とても綺麗な絵を描かれる作家さんですが、それだけじゃなく、細かいところでのリアリティも押さえている(ほんの数コマしか出てこない師匠のディティールの素晴らしさよ。モデルいるのか)。とても古典的な、JUNEだと思います。ボーイズじゃなくて、JUNE。普通のひとが読んだら、ただの良い話になりそうなところも含めて。せつない。

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