「楽園の泉」稲荷家房之介(ビブロス・ゼロコミックス)



PNは違いますが、九条友淀と同一人物です。ボーイズ物は名前を変えてるのかな。しかしこれはボーイズ物なのだろうか…。短編集です。とりあえず一番気に入った「星々の荒野から」をご紹介。
 幼い頃からともに宇宙に憧れていたマキタとアレフの二人。けれどもマキタは身体的な適性の問題で、宇宙飛行士にはなれなかった。マキタの代わりに自分が宇宙に行くことを誓うアレフ。自分たちはずっと一緒に宇宙にいくはずだったのだ。しかし実際にアレフが宇宙に旅立ち、帰還すると、両者の間には時の流れの差異があった。自分よりも老いていくマキタを見ていられずに、ひたすら宇宙へ飛び出し続けるアレフ。そしてかれが最後に戻ってきたときに、マキタの姿は…。
 落ちは書かない。予想してください、たぶん外れるから(笑)。わたしは野火ノビタの「宇宙士官候補生」を連想しましたが、あれよりはずっとハッピーエンドだと思う。わたしのツボである「置いていくもの」と「置いていかれるもの」の話かと思いきや…。ある意味で歪んでいるかもしれないけれど、感動した。最後の1Pで示される、閉じた世界で永遠に続く充足と幸福(であると思うのだよ、わたしは)に、ため息が出た。とてもSFで、とてもJUNEだ…。
 もっとも、JUNEというのなら、他の短編もみなそうなのですが。時代設定も人物造形もみな異なっているこれらの短編で、しかしどれにも共通しているのは、恋愛よりも激しく誰か(あるいはなにか)に惹かれる欲望。ボーイズもの、といいつつ、この作品集には、ひとつのキスシーンすら存在しません。そういうことで現す必要もないような、むしろ次元が違うような。そのあまりの純粋性に、こういう関係性を描く作家さんにとっての安住の地というのはどこなのでしょうか、といらん心配までしたくなってしまいます。だって、ボーイズじゃないような気がする…むしろ青年誌?でも絵は少女向けの美麗さ(しかし甘くはなし)なんだよな。むう。どこであっても描き続けてほしい。こういう話を。
 SFとか執事とか化物とか観念的な台詞とか銃とかJUNEとかオヤジとか好きなひとにはおすすめです。氏の公式サイトはこちら。同人系コンテンツ「Flexibledoor」で同人系のマンガを読むことができますので、お試しにどうぞ。

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