「できるかなV3」西原理恵子(扶桑社)



 待つこと久し、の西原理恵子のコミックスです。このひとのマンガは一回のページ数が少ないので、なかなか単行本にまとまらない。なので我慢できずにだいぶ雑誌でチェックしてたんですが、まとまって読むと破壊力がさらにアップ。いやーやっぱオリジナルはすごいや、と思います。いくらフォロワーが出ても、寄せ付けない貫禄があります。脱税マンガなんか読んでると、本当に「ああ、税金って払わなくて大丈夫なんだ。国税局ってパキスタンの絨毯売りなんだ」と思ってしまう(笑)。西原マンガの魅力って、やっぱりこの説得力と見も蓋もなさですね。理屈でごちゃごちゃいうマンガじゃないんで、語っても仕方ないんだけど、とにかく面白いです。コマのひとつひとつ、台詞やツッコミ文章いっこいっこにツボが発見できる。笑いが止まりません。
 今回は『ホステスできるかな』が一番面白かったかな。文字通りからだを張った体験モノのなかに、西原独特のペーソスが巧みに織り込まれてて、このバランスがいいなあと思う。しかし、笑ったのは北方謙三を店の子に紹介して「有名な小説家なんだよ、新宿鮫って小説書いたひと」と大沢在昌の前で云って、なおかつ北方謙三が「かいたかいた左足でかいた」って云ってるとこです(笑)。あと「そんなんだからいつまでたっても新宿小判鮫って言われるんだよー」「オレをその名で呼ぶのは世界中で西原、お前だけだっ」には、腹筋よじれるかと思った。いやあ、読んだことなかったけど「新宿鮫」読んでみようかな(笑)。
 あと、マンガのあちこちで、いまはもう別れちゃった鴨ちゃんがまだちゃんとお父さんとして描かれてて、西原はおかんとおとんをやりたかったんだな、とちょっと思った。鴨ちゃん…。
 ある意味でとても濃い一冊なんですが、濃くなきゃ西原じゃないって感じです。堪能いたしました。

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