「コンビ名」

「はいどーもこんにちは」
「こんにちはー」
「漫才コンビ、ノコッタヨコッタでーす」
「どーもボクら、まだまだこれからなんですが、最近このコンビ名の由来を聞かれます」
「単純ですけどね。ボクが横田でこいつがノコタ」
「なあ、疑問なんやけど、おまえはどうしてそう息を吸うようにデタラメいうの。俺の本名……ってなんで口ふさぐねん!」
「危なかった。CIAに狙われるとこやった」
「俺の本名、いつから国家機密になってん!」
「ええやん、俺が横田でお前がノコタで。俺はそれぐらいの犠牲、お前のために払ったる」
「わけわからんわ。皆さん聞いてください。ぼくらこないだテレビ局のお偉いさんの前に行きました」
「ああ、行った行った。めっちゃ緊張した」
「ぼくら売れない芸人です。まだまだあっぷあっぷしてるんです。そこに、テレビ局のえらいひとなんていうたら、溺れるものの前に現れた、いわば命綱持ってる船長ですわ」
「うまいこというなー」
「その船長の前で、コンビ名の由来聞かれて、それでもやっぱりボクが横田でこいつがノコタってなんやそれ。真面目にやろうや」
「ええやん、もう公式見解や」
「あのな、百歩譲ってそれでもええわ。だけどひとこと云わせてくれるか」
「なんや」
「なんでいっつもお前が横田で、俺がノコタやねん」
「いや、おまえ、ノコタやし」
「違うわ!ノコタなんて漢字も見つからへんっちゅーのに、大真面目にお前、局のお偉いさんに、はい、『ノコタ』の『のこ』は『木の葉のこ』の『のこ』で…とか説明すんなよ!」
「船長、うなづいてたで」
「そら、ある意味うなづくしかないわな」
「さすが大物は違うな。あんひとやったらいつか白鯨を仕留められる」
「エイハブ船長かい!」
「今度廊下であったら『エイちゃん』って呼べるな」
「呼ぶなー頼むから呼ぶなー」
「で、俺らもいっせいにバスタオル投げるねん」
「そっちのエイちゃんかい」
「もりあがるなあ、ノコタ」
「肩たたくなー!」

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