「ケータイ電話」

「はいどーもこんにちは」
「こんにちはー」
「漫才コンビ、ノコッタヨコッタでーす」
「しかしなんやね、最近流行りっちゅーたら、ケータイ電話」
「そうそう。どこでもかしこでもピポパポピポパポやってます」
「当たり前みたいに使ってますけど、あんなもん、俺ら子どものころは想像もせんかったね」
「そやね。ちっちゃな電話を持ち歩くなんてありえへんかった」
「それがいまや着メロですわ、写メールですわ。正直、仕組みわからんでも使えるっちゅーのは便利でいいね」
「え?お前、仕組みわからんの?」
「あ。ごめん。俺、機械弱いねん」
「あっかんなー自分。ケータイなんて機械いうほどのもんか。日常いくらでも使ってるやんか」
「そういうてもなあ」
「小学校で作ったやん」
「ちょと待て」
「それも低学年の理科の時間。しってますかみなさん、いまは理科とか社会とかないんですよ」
「いや、ちょと待て。話を変えるな」
「なんや」
「お前と俺はいまなんの話しをしとった」
「ケータイ電話」
「小学校で作らへん」
「俺の通ってた佐渡島の公立の小学校では作ったで。おまえ、私立やったんちゃうん」
「いやいやいや、ちょっと待て。私立公立の違いちゃうような気がしてきた」
「おおげさやな。作ったやんか、紙コップと絹糸で」
「それは糸電話じゃあ!」
「違わへんやん」
「ほな聞くけどな。お前のケータイはなにか、あのぶっとい絹糸でぶらんぶらんつながっとんのか」
「おいお前、日本の科学力をバカにすんなよ!」
「お前が一番バカにしとるような気がするけどな」
「あのな。いまや時代は21世紀。AIBOが踊ってアシモが首輪で繋がれる未来世界」
「逆や逆や!」
「海ではアトムが泳いでる」
「錆びるがな」
「そんな時代に糸電話て。ありえへん。俺が糸電話の例を出したんは、それが分かりやすいからにきまっとるやん」
「あ、そうか、例えか」
「そらそうや」
「じゃあ、ケータイはどういう仕組みで使えるん」
「糸でつながってる」
「だからそれは糸電話じゃあ!」
「しつこいな自分!だから、いまNTTが全精力かたむけてほっそいほっそいもう目には見えないマイクロミリオンな絹糸を開発してやな」
「やっぱり絹糸かい」
「それで俺らのケータイは各営業所に繋がってるに決まってるやん。そやなかったらどうやって音がつたわるん?」
「いや、あのな。俺は確かにケータイがどういう仕組みかは分からん。分からんよ。せやけど、絹糸で繋がってないことは分かるわ」
「…自分の知ってることがすべてと思うなや」
「ため息ついてかぶりを振って眼鏡を拭くな!!」
「おいお前、ケータイの営業所のねえちゃんたちが、俺らがケータイをバイブにしとるとき、どれだけ誠心誠意人差し指使って、糸震わしてるか知っていっとんのか?!」
「知らんわ!」
「三味線屋の勇かて真っ青の匠の技や」
「中条きよしもびっくりやな」
「あのなあ、よくめっちゃ人が集まった場所ではケータイ通じひんときあるやろ」
「ああ、昔ドーム行ったときそやったわ」
「あれはみんなのケータイの糸がからんでやな」
「もうええわ」
「NTTドコモのシザーハンズ大活躍」
「嘘をつけ」
「ホンマやて。こないだ交通事故で、ドコモの営業所に車つっこんで、営業所傾いたとき、その近くにいたドコモのケータイもってたやつ全員があらぬ方向にすっころんでな」
「糸ひっぱられたんかい!」
「俺はJ-PHONEで助かった」
「おまえ、そんなアホなことばっかいうてから。じゃあなにか?おまえのいま持ってるケータイも糸つきか?」
「モデルチェンジしたばっかや。J-KiNU-iTO506」
「よし!じゃあな、俺もいまからケータイ出して、お前にかけたる!糸が震えるもんなら震わせてみい!」
「あかんねん」
「あ?」
「俺、おまえの電話、着信拒否に設定してるから」
「相方やろが!!」

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