「Cat shit one(1)(2)」小林源文(ソフトバンク)



 WW2などを題材にしたリアルな戦記物を描かれる作家さんです。これはその作品のなかでもちょっと異色作?題材はシリアスなベトナム戦記ですが、登場キャラクターがすべて動物に置き換えられています。アメリカ兵はウサギ、ベトナム人は猫、日本人はサル、フランス人はブタ、中国人はパンダ。
 実は、これを知ったのは筋肉少女帯の「最後の聖戦」のジャケットからだったのですが、そのときは「ああこういうイラストなんだな」としか思わずにいて(まさか小林源文だとも気づかなかった…)、なにげなく本屋で手に取ったら、これでした。
 ベトナム戦自体には昔からそれなりの興味はあったので、ストーリーラインも面白かったのですが、絵の力がすごいなあ。本当にウサギなんですよ。表情とか仕草とか、ウサギ好きのひとに勧めたいが、ばんばん戦死してるので良くないかも…(汗)。でも可愛いんだよう。リアルなタッチで描かれるシビアな戦場の様子と、動物の描写が組み合わさって、なんともいえない雰囲気をかもしだしています。
 うん、なんとも独特。VC(猫)が撃たれると「ニャ!」と倒れたり、ヘルメットかぶらなきゃいけないからか、アメリカ兵(ウサギ)の品種は(たぶん)ロップイヤーが多かったり(あ、でも中国兵の耳は帽子から出てた…)、家族の写真を見せると仔ウサギが山のように映ってたり(これには倒れた)、ヒゲ剃ってる仲間に「嘘だろ」ってツッコンだりとか。もしかしなくてもギャグなのか。でも食べるのはニンジンじゃなくてレーションなんです。シビアにあの時代を描いてるんです。このリアリティとイマジネーションのせめぎあいが魅力的です。ていうか、コマを眺めてるだけで時間を忘れる。好き嫌いはあるだろうけど、本当に絵が巧いというのはこういうのをいうのだろうな。描かれてる動物がみな写実的で、でもマンガの絵としても機能している。面白いー。
 動物好きでミリタリー好きには間違いなくおすすめ。後者のひとはもう読んでるかな。

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