「バルバラ異界(1)」萩尾望都(小学館・フラワーコミックス)



 文句無しの名作「残酷な神が支配する」の次に始まった、萩尾先生の最新作です。買うんじゃなかった。というのが読み終えて第一の感想。もちろん、ああもうわかってたはずじゃないか、先が気になってしょうがなくなってしまうことくらい!という意味であります(笑)。萩尾先生のSF作品といえば、わたしは「マージナル」が大好きなのですが、あれもそうだった。一巻だけだったら気が狂いそうになったものだ。そんな風に異世界を構成する部品が無数の伏線となってちらばって、とても魅力的な小道具になっているのが萩尾SF。たまらんです。
 萩尾SFの魅力は、最初はさっぱり存在意味が分からないけれど、やたら魅力的なキャラクターや小道具、ばらばらになった伏線がやがてつながり一本の線になり、解放にも似たラストに向かっていくところにあると思うのですが、いまはまだ伏線が指し示されているだけだから、続きが気になります。子どもが育たないバルバラという世界は、少し「マージナル」を思い出させましたが、なるほど、そういう異世界SFなのね、と思わせたとたんに、第二話で現代日本に舞台が移り…ところが、そこは現代じゃなく未来の日本社会。もうたまらん状況のジェットコースター状態です。こっちの世界観把握能力をシェイクされているようだ。面白いなあ。
 もっとも、萩尾SFでは、わたしはそのラストに示された意味がさっぱりわかんなくて、おいてけぼりにされてしまうこともあるのだが(未だに「スターレッド」が分からない…「銀の三角」は、初読ではなにがなにやらだったけど、数年後になんとなくわかったような気がした。それが正解と限らないあたりが萩尾SFの奥深さなのか。とほ)、この「バルバラ異界」は大丈夫じゃないかなという気がしてます。萩尾先生の基本テーマである親子関係のゆがみなどもあるんですが、それでも根本は明るいトーンのような気がするから、納得できる最後が待っていそう。
 あと、各話の副題が素晴らしいです。「世界の中心であるわたし」「眠り姫は眠る血とバラの中」「公園で剣舞を舞ってはならない」…といった、この魅力的な言葉が、内容にも対応しているのが素敵。
 そういえば、萩尾先生の作品全集、第三期はまだ出ないのでしょうか。10代のころから待ってます。

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