「川に棲む海獣、その名も(略)」

「はいどーもこんにちは」
「こんにちはー」
「漫才コンビ、ノコッタヨコッタでーす」
「おまえ動物好き?」
「なんやいきなり」
「最近はなんや癒しとかいうて、動物の写真集とかすごい売れ行きらしいですよ」
「動物ちゅうたらタマちゃん」
「いたいた。可愛いねえ。いまでもたまにTV出るやん」
「うまいんかな」
「喰うな!」
「あれは飼育してあえて太らせてるんやないん?」
「喰わへん喰わへん」
「じゃあなんで飼うてるの?」
「飼ってるんとちゃうやん」
「みんなでわざわざ名前つけて可愛がってるやん」
「あれはたまたま多摩川に現れたところを、住んでるひととか見物人がタマちゃん呼びだしたんやろ、勝手に」
「多摩川やから、タマちゃん」
「そうそう」
「道頓堀やったらドンちゃんか」
「どう流れ着いたら道頓堀やねん」
「おれ、あそこに現れたらアザラシ褒めるな」
「確かにキッツイなあ、あの水じゃ」
「それでもあれやで。いざ住み着いたらめっちゃ人気者やで」
「そらまあな。受けるわな」
「ちょっとした道頓堀のマスコットになって、永住するかもしれん」
「気に入ってくれるんかな」
「そらそうや。時々、流れ着いた人間も食べれるし」
「こらこらこら!」
「守り神やな。いま道頓堀に現れたドンちゃんが、そんな人身御供を得て、我らが阪神タイガースを支えるねん」
「これ放送できんのー」
「ああ、でもよう考えたらせつないよな。そんなんあかんよな」
「当たり前や。ホンマ、冗談もたいがいにせんと」
「それやったらドンちゃん、18年に一度しか人間食べられへん」
「だまれえっ!」
「そんな大声出すなや。それやったら道頓堀はあかんなあ。いっそ近くで賀茂川どうや」
「まだあそこのほうが水はきれいやな」
「考えてみい、風情あるでえ。京都のもみじとかこうはらはらっと落ちる水面に、カモちゃんがこうぷかぷかしてな」
「可愛いんか似合ってないか微妙なとこやな」
「ときどき流れに乗って、観光客の前に姿を現して」
「それは受けるな」
「等間隔に並んだエサを食べるねん」
「やっぱり人間喰うんかい!」

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