「生涯最高の失敗」田中耕一(朝日選書・朝日新聞社)



 ノーベル化学賞を受賞し、一躍時の人となった田中耕一さんの著書です。
 あの癒し系キャラに惹かれたひとも多いでしょうけど(ハーイここにひとり)、この本ではそういう面だけを取り上げられるのではなく、自らの研究について分かってほしいというお気持ちが伺えます。正直、まったく理系でないわたしにはどれだけ分かりやすく語られてもやはりちんぷんかんぷんな部分は多いのですが、それでも、なんとなく「ああ、そういうことなのかな」ということは判ったかな?とりあえず、田中さんのテーマである「生体巨大分子を調べる(質量分析)」ということが、そもそも何の役にたつのか、ということは良く分かりました。 あと、日本にはたくさんいるであろう、縁の下の力持ちな研究者の皆さんの役割や苦労も。すごいなあ、いまの社会はいろんな部分で、これに支えられてるんだな、と思いました。
 というわけで、難しいパートも多いんですが、そこかしこにいかにも田中さんらしい部分も見受けられますので、ファンのかたはそこを拾ってみるのもいいかも。邪道な楽しみですみません。でも個人的に膝を打ち続けた新たな事実をひとつだけ。田中さん、鉄道ファン。なんて期待を裏切らないひとなんだろう。ごめんなさい、大喜びしてしまいました。
 
 でも、本当にただ研究をしていたい、研究が好きなんだという姿勢はいいなあと思います。それも学者ではなくエンジニアとして。最後の「(本を読んでもらうことで)講演・取材依頼が減り、私もみなさんの役に立つ研究に集中できることを期待しています」というのが、とてもらしいひとことだと思いました。 

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