「日本オタク大賞2004」唐沢 俊一・岡田 斗司夫・日本オタク大賞実行委員会(扶桑社)



 CSの「MONDO21」で毎年放送されている読んで字の如しなオタク番組の書籍版です。前年度も書籍化されましたが、今年度はそれとは比べものにならない厚さと情報量で、読み応えたっぷり。脚注好きなオタクにはたまんない一冊です。いわばオタク年鑑ともいえる本ではないでしょうか。
 わたしはいまやジャンルとしてのなにオタク、というのからは引退して久しい人間です。つまり、オタクとしての思考形態だけはしっかり残っているけれど、ジャンルについての戦闘能力は激しくロートルという、なんだか一番ややこしいタイプなわけですが、この『濃さ』はしっかり楽しめました。そもそも『オタク』ってなに?と問われれば、もうそれは「俺と同じ目をしている」ってあれでしかないという感じです。きっとこの本の中には、同じ目をしているひとがいっぱいいます。 
 そういう感じで、ジャンル違いであってもなんだか理解できてしまう錯覚にかられるようなオタク話を、のほほんと楽しんでもいいわけですが、「あとがき」で語られている「オタクの共通言語の消失」とかも考えてみればみるほど面白かったりします。共通言語は消えても、本質は残る、というのがなるほど、と思えて。だからとにかくみんな語ればいいと思います。屑でもありふれてても下手でもいいから、とにかくかたちにすればいい。淘汰されるかどうかを決めるのは本人じゃないし、それをまとめて解析するのも本人じゃない。だからまずは差し出してみること。要するに「自分の考え」とか「価値観」でものをいえることって大事だなと思いました。云いたいことがあるって大事だよね。それが単なる萌えであっても。あるいは萌えであるからこそ。

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