「素晴らしい世界(2)」浅野いにお(小学館サンデーGXコミックス)



 なにげなくマンガ喫茶で手に取った一巻がとてもよかったので、新刊で見つけた二巻を購入。23歳の新人マンガ家さんだとか。
 ロンド形式で綴られていく短編は、どれもいまの日本で生活する人々の息遣いを巧みに切り取っていて、こういうのを昔は文学でやってたのかなと思います。他愛もないけどほっとする空気や、あるいは空しいばかりのため息だったりと作品の底を流れる雰囲気は様々ですが、とくに子どもを主役にした話のその年代ならではの閉塞感の表現が見事だと思う。ここで描かれている小学生の行き詰まり感といまの自分の抱えているもののそっくりさにどきりとさせられたりもします。こどもだからおとなだからってそう変わりはしないね。
 どの短編も「行き止まり感」に満ちていながらも、最終的に集約されるのは、まさにタイトルどおりの「素晴らしい世界」、What a Wonderful World という言葉に現れている通りの静かな優しい祈りです。どうか、幸せでありますように、というその祈りを、甘すぎると思う人もいるでしょうけど、わたしはその甘さが好きです。

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