「巴里製皮膚菓子」山田詠美(文)・小林丸人(写真)(幻冬舎文庫)



 ちゃんと読んだ山田詠美は「アニマル・ロジック」までで、それ以後はなんとなく読まなかったんですが、これはたまたま手に取ったところ、巴里を舞台にした男たちの写真と文章の組み合わせが美しく思えたので購入。そして感想はどこまでも山田詠美。エイミーはどこまでもエイミー。このひとは、いつまでも文学少女の匂いが消えないというか、とにかく綺麗な言葉や漢字や比喩や体言止めをこれでもかと嬉しげに使ってくれるので、ああ、山田詠美を読んだなという気分になるのです。ヲタクのひとには馴染みがない作家かもしれませんが、読んだらとても懐かしい感じがするんじゃないかな。文章が巧いとか日本語としてどうこうというより、そこから生まれるイメージが、あくまで文字が表現する綺麗に留まっている印象がする。それが、こういう写真との組み合わせでは良い効果をもたらしていると思った。
 これらの写真は一枚ですでに雄弁な存在であるから、それになにか加えるとしたら、一篇の小説を書き、その写真を挿絵という存在に変換してしまうか、写真から溢れるイメージの具現化に努めるしかない。そういう意味で、この本の文章は余計な仕事をしていないと思いました。

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