「悪魔はあくまで悪魔である?都筑道夫恐怖短編集成1」都筑道夫(ちくま文庫)



 からくり砂絵シリーズなどでおなじみの著者の怪談や恐怖譚の集成。昭和40年代後半から50年代にかけて書かれた作品集なので、いささか時代的に古いかなと思うものもありますが(この頃の怖い話というと、幽霊が定番で、痴情のもつれというと不倫だったのね)、設定だけを取り出してしまえば似たような感じになりそうなものなのに、どれひとつ同じ話が無い。当たり前といえば当たり前かもしれませんが、すごいよなと思います。寝る前に一篇ずつ読んでいくような読み方が正しいかも。しかし貧乏性のわたしは一気読み。だって面白いんだもん。
 全部で41編が収録されていますが、わたしのおすすめは「半身像」「黒い招き猫」「小鳥たち」「百物語」などかな。いずれも、ある不思議で恐ろしい状況が起きるのですが、具体的な原因や因縁が説明されていないのが、奇妙な話っぽくもあり、かえって怖くもあります。すべてを読み終えたあと、夜の闇を自分の部屋の窓からのぞくことがどうしてもできないような、そんな読後感です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする