「サプリ(1)」おかざき真里(祥伝社・フィールヤングコミックス)



 おかざき真里の最新刊です。27歳にして7年付き合った彼氏に振られた主人公。CM製作の仕事はやりがいあるけどやたらと忙しくて、息をつく暇もない。そんな彼女の前に現れた二人の男性と主人公の関係は…とざっとストーリーを書いただけでは、おかざき真里がなんでこんなもの描かなきゃいけないかわからないと思ってしまいそうですが、そこはそれ、おかざきですから。期待は裏切りませんよ。
 マーガレット連載の「シャッターラブ」のときも似たようなこと思ったものですが、今回の作品はそれよりもずっとおかざき色が濃い。おかざきでないと描けない世界になってると思います。それはなにもあの美しい描線だけのコトではありません。可愛らしいコミカルな線もあるし、なにより雨だし。植物だし。夜だし(本当にこのひとは『夜』を描くのが巧い。あの独特の空気と世界ー夜という特殊な空間ーをマンガでここまで表現できるのはこのひとだけだと思う)。キャリアを積んでいく主人公という面では『タフ』(「やわらかい殻」収録)に似てますね。あれも読んでて気持ちよかったけど、今回も、仕事の大事さとかやりがいとかと同時に、仕事の持つどうしようもなさや忙しさに食い荒らされていく感じが実にリアルで、CM業界のような派手な仕事に就いてるひとでなくても、働く女なら十分共感できるものではないでしょうか。
 恋愛マンガとしても、話はまだまだこれからながら、一瞬のときめきとか、誰かを気になる感じ、恋に落ちるか落ちないかで揺れる部分、どれもとても良いです。あのぼーっと天然発熱してる感じがなんでこんなに巧く描けるんだろ。続刊が楽しみです。

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