戸川純バンド「TpgawaFiction」



 いやもう純さまマニアなら当然入手でしょうし、わたしも良いとか悪いとかピンとくるとかこないとかで表現する気にもなりません(笑)。戸川純です。
 信者というならそうかもしれん。わたしはヤプーズ好きなので、純さまにはヤプーズを…切実にヤプーズを…と求めてやまない気持ちがあるのですが、そうでないこのユニットでも、この声を聴くだけで満足な部分があります。不安定に揺れて、危うく伸びて、でも、ほんの一音節で戸川純と分かる。このひとはこれを20年やってきて、そしてこれからだって続けていくのでしょう。
 このアルバムには、6曲が収録されていますが、唯一の戸川純による作詞曲「オープン・ダ・ドー」が、なんとも純さまらしいファルセットで歌われる名曲ですね。絶望的なひきこもりの心性のまま、暴れながら人間を怖れつつも、ひととのつながりを「きれいな月」というシンプルな表現で象徴するのが、ヤプーズの名曲「NOT DEAD LUNA」を思わせる曲です。一見、絶望的でおしまいのひどい状況でも、戸川純の歌詞はすべてを諦めきることがない。だから好きなんです。
 しかしそういいつつも、新たな「諦念プシガンガ」を、との空恐ろしいコンセプトで作られた(だってねえ…)「おしまい町駅ホーム」も、すごいな。繰り返される「Dive into the railroad」という響きに、泣いてしまった。いつもひとりきりで、駅のホームに降り立ったときに訪れるあの気持ち。ずっとそこにいると捕らわれてしまうのが怖くて、足早に立ち去ることで逃げてきたあの思い。夜の冷えた空気まで伝わってくる歌声とストリングスが絶妙に絡み合って、美しくも哀しく、絶望的な孤独を、しかし安らかに唄う曲になっています。こんな曲、ライブで聴いたら、どうなっちゃうんだろう…。
 ライブ活動も復活しているようですし、これからも末永い活動を期待しています。YAPOOSのライブには行きたい。

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