「バルバラ異界(3)」萩尾望都(小学館・フラワーコミックス)



 物語の緊迫度合いがじわじわと高まってきた第三巻。思えば、望都先生のSFはどんなに壮大なものであっても、二桁巻いくことはない。あの「マージナル」だって全五巻というすっきりかげん。なので、これもそんなに長い物語ではないかもしれない。
 この巻では、物語の要である青羽はほとんど幻影でしか登場しないうえに、異界である「バルバラ」の世界は影を潜め、現代の日本と地続きであることが肌で分かるにも関わらず、どこかとらえどころがない21世紀後半の日本が舞台となっているため、話の中心となるキャラクターの重心これまでの中心人物たちから微妙にずれつつあるような気もしますが、それもまた面白い。わたしがこの巻で気になったのは、他人の夢に潜ることができる渡会が息子であるキリヤに対するときのあまりの子どもっぽさと素直さかな。かれのキリヤとの手探りの親子関係が、これからの物語のキーとなるのは間違いないけれど、どうもこの子どもっぽさがわたしには不吉なものになるように思えて仕方ない。ここまで堂々たるオリジナルSFファンタジーが読めるのは幸せです。

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