「わたしのグランパ」筒井康隆(文春文庫)



 萌え小説。あ、一言で終わった。
 萌えといって悪ければ、願望充足小説というか。こういうのカッコいいよね、こういうの理想だね、と男の人が萌える人物造形の侠気溢れる老人を主人公にして、さらに孫である美少女がそっと寄り添う図式は、ちょっと恥ずかしいくらいに願望的です。でも嫌味ではない。筆致に余裕があるからかもしれません。ジュブナイルらしいですが、10代の子が読むよりも、50代以上のひとが読んで「良い話…」とうっとりするような、そんな話じゃないでしょうか。おとぎ話みたいに。そもそもそういう造りなのだから、それを「非現実的」だと否定するのはつまらない話です。細かいところまで清潔な良い話なんですが(かといってつまらないわけではない)、ところどころに、筒井康隆らしさがちゃんとあります。筒井康隆はどんな話を書いても筒井康隆なんだなあ。
 にしても、お話はコンパクトで教育的だし、映画にしやすいなあと思ってたら、本当に映画になってたみたいですね。しかし、そのキャスティング、グランパが菅原文太にはまったく文句ないのですが、グランパが身を張ってヤクザの嫌がらせからその店を守ろうとするバーのマスターが浅野忠信(しかもヒゲ)だと知って、大きく動揺したわたしが、これ以上こんな良いお話について語る資格はなさそうです。ぶっちゃけ、萌えた。ごめんなさいごめんなさい。

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