「なにたべた?」伊藤比呂美+枝元なほみ(マガジンハウス)



 詩人の伊藤比呂美と料理研究家の枝元なほみのFAX書簡集。FAXだからか、横書きだけど、レイアウトが上手でとても読みやすい。若い頃からの友人であり、お互いの引っ越した家と代々の男はぜんぶ見てきた、という仲の二人が、今日はなにを作った、なにを食べたという生活話を飾り気なく綴っていく様子は、ちょうどWEB日記を読んでいるようなさりげなさで心地よいです。二人とも、男や仕事のことで疲れたり悩んだりしながら、それでも料理を作る。そこには、食材や料理方法についてとりとめなく語りながら、そっと互いの人生を思いやるシスターフッドな物語があります。レシピ本、というほど肩肘張ってなくて、エッセイとしても軽く読めるけれど、読み込もうと思えば繰り返し何度でも読める本です。
 伊藤比呂美については、作品の幾つかはとても好きで暗唱できるものもありますが(「のろとさにわ」収録の「カタトロスフィー」とか)、多くは、あまりにも女性の生理に根ざしていているので、読んでいて苦しい感じなので(「カノコ殺し」は一回読んだだけなのに、あの「滅ぼしておめでとうございます」のリフレインがやきついてしまった)、わたしには、これくらいのエッセイがちょうどいいのかもしれません。へタレで申し訳ない…。


 枝元なほみについては、まったく予備知識がなかった。ですが、料理研究家だけあって、書かれている食事が、とても自然で簡単に出来そうな日々の「お惣菜」なのに、美味しそうなのはさすがです。材料に凝るわけでもなく、シンプルな内容なので、わたしでも出来そうなくらい…いえやっぱりやめておきます。

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