「ドリームキャッチャー(全4巻)」スティーヴン・キング(新潮文庫)


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 それぞれ人生に難題を抱えつつも、少年時代の絆をそのままに過ごしてきた4人の男たち。かれらを繋ぐのは変わらない友情と、さらにもうひとりの大事な友の存在。かれらが毎年恒例の鹿狩りに出かけたとき、ある遭難者を助けたことから物語は始まる…。
 というわけで、キングお得意(?)の少年同士の友情がキーとなり、超自然の存在と闘うタイプの、SFホラーであります。以下、ネタバレは保護色にしています。
 最初は、あまりにも汚い(いろんな意味で)表現の多出と、またこの手の友情話か、というあたりで、どうかな、と思ったんですが、どうしてなかなか。1巻の途中、遭難者の奇妙な振る舞いがどんどんエスカレートしていくあたりから、目が離せなくなります。現在と過去を行きつ戻りつする時空間の流れと、語り手の巧みな交代も実に効果的(で、これに見事にだまされたんだけどな…)。2巻の途中になると、この話があと2冊で終わるという勿体無さと、ここまでの展開になってるのにあと2冊も残っているという嬉しさという、奇妙なジレンマに身もだえしたり(笑)。精神を占領するエイリアンという設定とそれとの駆け引きや、救いとなる小道具のいくつかは、バックマン名義の「レギュレイターズ」にそっくりだし、下巻のほぼ2冊にわたって繰り広げられる追走劇は、ちょっと映画的にすぎるような気もする。でも、それを十分にハラハラして最後まで読んだからにはわたしの負け。全巻揃いで購入したはずなのに、3巻がどうしても見つからなくて、読んでる途中で、そのまま本屋に行って購入し直したくらいなので、もう完膚なきまでにわたしの負け(笑)。それを認めていいますけど、読者にこういう行動を取らせてこその物語作家だと思います。
 そして、驚愕のラスト。いや、本当に無茶苦茶な話で、どうやってオチをつけるのかと心配になったけど、そこはキング。あんたやっぱりそういうひとだ。エピローグでひっくり返ることは請け合いです。これで怒るひとはキングを読んではいけないのかもしれません。だって、これでこそ、この物語はきれいに説明がつくのだから。この説明は無しでもいいよというひともいるかもしれませんが、作家として生まれたからには、こういうことを一度はやってみたいのかもしれません。そしてわたしは、まだまだキングにたぶらかされたいです(笑)。

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