「驚愕の曠野」筒井康隆(河出文庫)


<amazon>
 筒井康隆を地道に再読中でもあります。これも、発売当時に読んで、えらく感動した思い出がありました。
 もっとも、なにがそんなに良かったのかを覚えてなかったのですが、再読して納得。中国古典のような雰囲気の枯れ果てた世界で殺しあう男たちの現世と前世とあの世が錯綜し、重なり合う多重構造と、その物語の読み手である「おねえさんとこどもたち」の存在とが、溶け合って消滅していくこの雰囲気。そりゃ、わたしは好きだわ。さらに、わたしは破天荒だったり残酷だったりする物語のなかで見え隠れするロマンティシズムに弱い。ほら、ピュアだから!(自己申告)一見、殺伐としたこの小説世界のなかにもそれは存在している。だから最後の一ページに記された僅かな言葉に、とても感激した。あと、付け加えるなら、文庫の解説(川村湊)が、とても親切で、おかげでこの複雑な小説の意図する内容がすっきりと頭のなかに入ってきたような気がします。文庫の解説にこういうことを感じるのは珍しいです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする