「ファントム・オブ・パラダイス」(ブライアン・デ・パルマ監督)


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 大昔にレンタルで見て、大感動したもののそれっきりになっていた一作。DVD全盛のこの世となったからには、ぜひDVDで再見したいものだと思っていたら、999円で販売です。そりゃ買うよ。「オペラ座の怪人」を下敷きにしたロックオペラらしいですが、わたしは「オペラ座」をJETのマンガでしか知らないので、原典との違いとかはよく分かりません。たぶん全然違う。自作のロックオペレッタ「ファウスト」を、悪徳プロデューサー、スワンに奪われただけでなく、無実の罪を着せられて、刑務所では歯を失い、脱獄した後に、プレス機で顔を焼かれた主人公ウィンスロー。かれは醜く焼け爛れた顔を仮面で隠しながら、自作の歌を素晴らしく歌ってくれたフェニックスのために、スワンと悪魔の契約を結ぶことに…というストーリーです。以下、ちまちまと感想など。
 場面のそこかしこに使われている曲も素敵ですが、ギミック好きのわたしがナンバーワンに好きな場面は、パラダイス劇場のこけら落としでのロックナンバー。アリス・クーパーかキッスかというシアトリカルぶりが、たまらなく好きです。ぜひともビーフにまるごと一曲を歌わせて欲しかった(笑)。
 スワン役のポール・ウィリアムズは、正直云ってあの役回りには老けすぎてると思った。だけど、雨の降りしきる夜に、ウィンスローが眺めているのを知りつつ、薄着をまとっただけのフェニックスを抱いて口づけを続ける場面の、悪魔的な雰囲気は、やはりすごい。
 あと、再見して思ったのは、これは単なる恋物語ではないということ。ウィンスローのフェニックスへの想いは、一方的な片想いにしか過ぎない。だからこそラスト、フェニックスが倒れたウィンスローの髪を撫であげながらかれの名前を呼ぶシーンがせつないのではないかと。ウィンスローの献身に対して、与えられたのはそれだけ。だってフェニックスは(怪人となる前の)ウィンスローとは、一度出逢っただけなのだから。当たり前なんだけど、哀しい。普通の女性であるフェニックス(だからこそスワンに惹かれる)には、ウィンスローの愛は届かないのだ。
 なんせ74年の作なので、時代を感じる部分が多いのは仕方ないですが、いっそそういう意味で見直しても、とても面白いと思います。出てくる女の子やロックバンドののファッションも貴重。もちろん、時代に関係ない主題の部分も面白いんです。わたしの好きな映画です。

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