「Jの総て(2)」中村明日美子(太田出版・F×コミックス)



 モンローに憧れる巻き毛の美少年Jの人生を描く第二巻。一巻のギムナジウム編から流れて舞台はニューヨークへ。物語は「ここから」進み始める。
 うっかりなわたしはてっきりニューヨークで成功した歌手になったJの語る半生記がこの漫画の内容だと思っていたので、そこがまた出発点でしかなかったことにプチ驚き。しかしここでもまた、魅力的で生き生きと美しいJと、かれを取り巻く人々の絡み合う関係性が語られます。今回登場するビートニク気取りの自称詩人のリタは、こういう作品での女性キャラとしては珍しいほど、人間として存在する女性。なので、彼女の迷い続ける言動や傷つきは、胸に迫るものがあります。一歩間違えれば、物語を展開させるためだけの便利な道具に使われかねない人物造形でもあるのに。美しい描線も、直接的なのに下品でない性的描写も相変わらずで、ただもう、続刊を待ってます。
 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする