「陰陽師(12)」岡野玲子(白泉社)



  『晴明、出産』の帯文句に口をぽかーんとしてしまった前巻のあたりから、なにやら話がトンデモな方向に流れていっているようなそうでないようなこの作品。うーん、でもわたしはそんなに違和感なかったんだけどな。産んだのは真葛だしな。
 
 わたしのような無教養な人間には意味がさっぱりわからないものの、えんえんと続く宗教的な語りがそれでもひとつの結論に落ちていく展開と、身体を寄せ合う真葛と晴明の画、ちょこちょこ入る悪ふざけのようなギャグ(?これ、嫌いなひとも多そうだけど、わたしは好きだ…。巻物ラブ)、凄みのある描写が混在したこの世界は、やはり比類するものがないのでは。ていうか、おなじことは普通できない、やらない、無理。
 確かに、初期の博雅と晴明の平安ゴーストハンター物が好きだった流れでは、ついていけないものがあります。わたしも晴明がぶつぶつ云ってることが理解できるというつもりはやっぱりない。けれども、この絵、画面構成を見れば、語られる理屈がさっぱり分からないにしても、それがもたらす雰囲気には、陶然とさせられるものがある。そしてこの巻では、いよいよ晴明自身の物語になんらかの決着がつけられるような流れになっています。そこにたどりついた瞬間になにが見られるのか。それが気になるうちは、やはり最後まで読み続けてしまうと思います。

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