うわあ、もう終わった。
 というのが、これが最終巻と知ったときの正直な気持ちでした。読んで納得。いや、本当に終わったよ。あそこまで拡げた伏線と設定と世界観の風呂敷を、さすがに駆け足になったとはいえ、ここまでコンパクトにぎゅっとまとめあげた技はさすがです。現実世界ともリンクしているようなオリジナルな幻想世界を創りあげて、そこを舞台にした壮大な物語を始めるマンガ家はいくらでもいるけれど、物語をきちんと終わらせて、キャラクターを収めるところに収めて、「この話で描きたいのはこれだけ」と云わんばかりに読者に差し出せるマンガ家はいまや少数派だから。
 あと思ったのは、前作の「残酷な神が支配する」が、かなりの大作だったので、そのつぎに持ってくるのは、これくらいのやんちゃな設定と軽やかなストーリーでちょうどよかったのかもしれないなあということ。でも正直「マージナル」と思っていたら「あぶない丘の家」でした、みたいな印象があるのは否定できません(笑)。
 ところどころ勿体無いようなキャラクターの扱いや、ストーリーのすっとばしかたに首を傾げるところもないこともないのですが、この最終巻の後半が、文句云えないくらいにわたし好みだったのでいいのです。キリヤを失うまいと、夢にダイブし続ける渡会の姿と、その行為によって行われる、記憶と世界の修正。死ぬはずのひとが生きて、つながるはずだった未来が途切れてはまたつながって、存在するはずの誰かが消えて、終わるはずだった世界が祝福される。繰り返される記憶と夢の再統合による、より望まれた世界への変換。こんなもの、好きに決まってるじゃないか(笑)。
 とにかく、萩尾望都でないと描けない作品なのは確かだし、この後半の駆け足も、もしかしたら新しい作品が描きたくなったからかなあと思ってみれば、次の作品が楽しみになります。早くそれが読めますように。

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