「夢幻紳士 逢魔篇」高橋葉介(早川書房)



 これで二冊目になります。早川版青年夢幻魔実也氏の活躍(というかうたたねというか影ががんばってるというか料亭で酒呑んでるだけというか)でございます。
 もうわたしは、いまの高橋葉介の絵が好みで仕方ないうえに、この早川版は夢と幻想がリンクしあって思わぬところにつながって修正が行われたりそのままだったりするストーリー展開なので、なにを申しましょうか。ページを開いてはため息をつくだけです。最初の「血まみれ心中」の扉絵も大好きですが、話も好き。魔実也氏の優しさ(というものが気まぐれながらこの男にもあるのですよ)がよく現れていると思う。新キャラの「手の目」も可愛いですね。可愛いだけでなく、文字通り背負っているものがあるわけですが、わたしとしてはそのつるぺ(略)いやはや、可愛いお嬢さんです。
 高橋版の新解釈の「件(くだん)」は、そのキャラクター造形がすごく好みで、かつて某名匠がお描きになったくだんにめまいを起こした人間としては、これこそが「くだん」と云いたくなりました。
 しかしなによりも最終話。1P二コマで見開き、同じ台詞がサンプリングされるように続けて聞こえては隠れる。夢の中を渡り歩く存在ってだから夢幻氏はわたしの理想の楠本柊生だったんだってば!(号泣)しかしかれはもうそういう存在ではない、でも夢幻氏はいつでも現れるでしょう。
 かれと関わりをもった人間の前に。あの微笑で。

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