「寡黙な死骸みだらな弔い」小川洋子(中公文庫)



 小川洋子の作品を初めて読んだのは、はるかむかしの学生時代。確か「シュガータイム」だったと思うのですが、主人公が吐かない過食症だったのに、ちっとも体重が増えない、とかくだらないところが気になってそれきりの作家さんでした。
 今回は物語が連作短編でつながっている形式なのが面白そうだったのと、紹介文が幻想めいてたので購入しました。なかなかの佳編揃いなうえ、物語が人物や小道具を通してつながっているの面白くて、最後の一編まで、時に切なく、時にあまりの展開に足をばたばたさせたりしながら読むことが出来ました。小道具から喚起されるイメージがその短編の色を決めているので、ほとんどぜんぶが違う色合いで、退屈せず読めたと思います。
 ただ、やっぱり細かいリアリティの部分では気になることもあったかな。あと、タイトルが内容に合ってない気も。これなら「寡黙な死骸」か「みだらな弔い」のどちらか一つで十分だと思いました。

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