「おとなは知らない」シモーナ・ヴィンチ(早川書房)



 イタリアの下町の風情が残る町で、大人たちが知らないこどもたちだけの秘密基地が出来ました。最初、そこで行われていたのは他愛のないじゃれあいやちいさな秘密だったはずが…という物語。
 わたしは東京綾瀬で起こった女子高校生コンクリート詰め殺人事件を思い浮かべましたが、この作品で重要な役割を果たすのは、持ち込まれるチャイルド・ポルノの雑誌の影響です。そこら辺とラストに至る流れはいささか類型的だと思いますが、27歳の新人作家がこういう作品を書いたらそりゃ注目されるだろうなと思ったり。
 しかしそれにしても、洋の東西を問わず、なぜ「少女」は殺されるのでしょうか。わたし自身にもそういうモチーフに惹かれる傾向があるからこそ思います、わたしたちはなぜ少女が傷つけられ、殺され、悲しむ物語に惹かれるのか。間違ってもそういう作品が規制されるべきではない(ある種の年齢制限は必要だと思いますが)と思いつつ、わたしはずっと考えます。なぜ「少女」は殺されなければならないのか、と。同じくらいに少女が愛されていることも知ってはいるのですが。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする