「花も実もない人生だけど」中村うさぎ(角川文庫)



 ご存知ショッピングの女王のエッセイ集です。
 ブランド品への買い物依存から、ホスト遊びにハマってゆき、やがて、ブランド品がゴミと化したと同じく、ホストにも失望した作者の行動の元には「わたしはここにいていいの?」「わたしを好きだと云って」「わたしの居場所はどこにあるの」という執拗なまでの言葉があるわけですが、正直、中村うさぎの著作を続けて読んでいくうちに、なんでこのひとは途中でJUNEに行かなかったのか疑問に思った(笑)。やっぱりあれは思春期に出会っておかないといけないのか。いや、結婚してから花開くひともいるな。
しかし、中村うさぎはそういう間接的な癒しではなく、より直接的な癒しを求めたのでしょう。多少、説教くさくなるときもあるけれど、整形にしろデリヘル体験にしろ、とりあえず自分で体験せずにいられない行動力(たとえそれがつまりそれほどまでに彼女の飢えは激しいのだという証明になったとしても)と、型にはまったフェミニズムに直行するわけでもないバランス感覚が、わたしには共感できるし面白いと思います。ひとつひとつの行動自体はやむにやまれぬ内的必然性によるものであっても、それを読み物として提供するときにはエンタテイメントとしての客観視を忘れないのがすごい。
 中村うさぎはホストにハマったことから様々な本を出版しましたが、私小説として読むと、「さびしいまる、くるしいまる」(角川文庫)が、わたしは一番好きです。


 ホストにハマるなんて馬鹿でえ、と思うひとにこそ読んでもらいたいかも。比較すると怒られそうですが、ある種のバンギャにも身につまされるものがありそうです。共通しているのは、恋をしつつも、その成就を願うよりも、ただ相手の瞳に自分が映ることに焦がれてやまない気持ち、恋愛沙汰のレベルでつきあうよりも、相手に自分の存在を認めてもらい頼られたいとまで思う感情。そうなったら、きっとわたしは自分のことが好きになれるから。あなたがわたしを見てくれるなら、そこではじめてわたしは自分を愛せるから、という衝動ではないかな。わたしはとうとう正しいバンギャにはなれませんでしたが(正しいってなんだ)、そんな気持ちには十分覚えがあるので、ちょっと泣きそうになりました。

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