空知英秋「銀魂(5)?(15)」(ジャンプコミックス・集英社)



 というわけで完読しました。幸せ。
 TVアニメにもなってるので知ってるひとは知ってると思いますが、知らないひとは公式サイトを。正直云って、これでも全然判らないというか「銀魂」の面白さというのはダイジェストで説明いにくいことこのうえないものであります。それこそ読んで頂くしか
 SF設定をなんでも自由に出来る隠れ蓑ていどにこそっと振りかけつつも、その実は幕末モノでもあるんだけど、真面目な幕末スキーが読んだら怒っちゃうことは請け合いのトンデモさ。主人公と脇役が今週のジャンプを奪い合うだけで一話使うこともあれば、敵味方入り乱れた総力戦を単行本1巻使ってやることもある、破天荒さ。基本は人情モノのふりをして、どうっしようもない下ネタ全開で突っ走る力技も見せてくれ、泣かせるところは巧みに読ませ、笑わせるところは素晴らしいボケツッコミの嵐を繰り出す、まさになんでもありのそんな作品。
 ある意味、正しい少年マンガだと思います。冷めたふりして時にはベタかも。でもベタって強さだから。それを無視してつまんないマンガ読むよりは、ベタを最大限利用して、こっちを笑わせ泣かせてくれるマンガのほうをわたしは読みたい。とくに妖刀紅桜篇(単行本11?12巻)のクライマックスあたりは、作品の盛り上がりに明らかに絵が追いついてないんだけど、それくらいぐいぐいと物語が先に先に進んでいくのが分かる。生理的に気持ち良いくらいに、面白い。良い意味で、ノートにシャーペンで描かれた中学生男子のマンガ並みのプリミティブな勢いに溢れてる。わたしはその結果の画面よりも、むしろそのエネルギーに涙する思いでした。やっべー超面白い、そんな言葉しかいらないそのたくましさに、正しさを感じた。
 なんといってもキャラクターが良い。主人公三人トリオや準レギュラーの真選組の隊士たちだけでなく、一回限りの脇役や思い出した頃に登場するレギュラー陣に至るまで、しみじみと、良い。ときにはギャグのあまりに人格が破壊されるさまもまた愛らしい。わたしのお気に入りは、クールぶってるくせにエリザベスなる素敵オトコマエなかのヒトは大変だなキャラをこよなく愛してるじつはかなりのさみしんぼうなヅラこと桂小太郎と、ゴリラと連呼されるストーカーだけれどヒゲだし実に良い眼をしてる常に懲りずに報われない近藤勲局長です。トーンを多用しない描線で描かれるキャラクターはことさら美形とうたっていなくとも、誰もが実に凛々しく涼やかです。ぶっちゃけ、やったらおしまいないけないことが好きな姐さんがたが、惹かれる気持ちは判ります。わたしも、桂と銀さんが二人で肩を並べて高杉にタンカ切ったときには、萌えた。あ、でもね、これどっちかというと萌えより燃えだから!わたし、二次元では男男より男女カップリング萌えだから!(いま自分をフォローしようとしてあらぬ方向に深い墓穴を掘らなかったか、わたし)
 男女カップリングといえば、その話も。女の子がお約束でない少年マンガは良いマンガと相場が決まっていますが、この作品もその面ではお墨付きです。綺麗でカッコいい女子も多数登場しながらも、ギャグレベル以外での恋愛要素はほとんどないあたりも、読んでるこっちがうっとり妄想できる余地が残されていてまた嬉しい。局長とお妙さんの手も握らない(握れない)静かな午後のある日、みたいな二次創作が読みたいなー。静かなのは局長が息をしていないせいかもしれませんが(最新刊では土方さんがお妙さんの女心を推察していたが、土方さんが女心を分かっているとはとても思えない…笑)。
 
 あのジャンプ連載作品だけあってこれから先の展開がまったく読めずに、ただ単行本を心待ちにするしかありませんが、久しぶりにこういう感覚を味わうなあ、とにこにこしてます。ジャンプのマンガが嫌いじゃなくて、下ネタもOKで、戦う男子ときりっとした女子が良くて、ボケとツッコミの応酬が好きで、幕末ファンじゃなかったら(いやだって幕末ファンはいろんなこと厳しいみたいだし…しかしそんな幕末ファンのツッコミもいなせに流しちゃう空知先生って素敵)、おすすめの作品でございます。よろしければ、ぜひ。

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