「岡山女」岩井志麻子(角川ホラー文庫)



 …なーのーにー。こんな面白い話も書くんだもの、と頭を抱えた。無理心中を迫った男に刀で切り付けられ左目を失った女が、その代りに得たものは、見えない眼窩に映る死霊の影だった。霊媒師となった彼女のもとを訪れる依頼客と、かれらにまとわりつく死霊たちがもたらすものは…という連作モノです。
 お得意の明治時代の岡山が舞台なのですが、これが、なんとも面白い。ひとつひとつのエピソードはおぞましくも哀しく、生々しいけれども、可憐。これ、シリーズ物にしてほしいくらい。漫画になるならJET先生希望。「ぼっけえ、きょうてえ」が好きだったひとならば、楽しめるでしょう。わたしのお気に入りは、短いエピソードの断片が次々と積み重なっていく「岡山ハイカラ歓商場」です。

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