「楽園に酷似した男」岩井志麻子(朝日新聞社)



 だから、読んでいくと誓ったそばから、こんな作品を読んでしまって、目を白黒させているわたしです。内容的には、それこそ「私小説」の続きというか、ぶっちゃけほとんど同じ話というか(ラストまでほぼ一緒なんだもんな)、なのですが、こっちの問題は、文体。帯には「新たな文体」とか書いてますが、そういう問題じゃない。あのね、句読点が一切無い のです。
 「けれどそんな奴らに囲まれる私だって決して高処から彼らを笑って笑って笑っているだけで済むはずがないのは誰よりも私がわかっていることなのだからせめて私は私を笑わないでいられるようにはしたかったのに
 任意の一文を抜き出しましたが、全部がこの調子です。実験小説書いてるころの筒井康隆か。改行も少なく、これで200ページ。正直云って、目が廻った。なんでまたこんなことを。句読点入れた改訂版を出したくなった。そりゃあ、この文体によって、一種独特の悪夢のような雰囲気は出ていますが、それ、内容に関係ないし。むしろ、内容の良し悪しが分からない。作家というのは思いきったことをするものだ…。

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