「私小説」岩井志麻子(講談社)



 この本は「チャイ・コイ」のある意味で続編ともいえる、著者自身の恋愛遍歴を描いた小説です。


 が、ひとりの相手との一度の逢瀬を濃く描いた「チャイ・コイ」に比べれば、正直云って、内容が薄く見えるのもいたしかたないかも。独特の、修飾語が舞い落ちてくるような可憐で生々しい文体は健在ですし、ところどころに、どきりとするような警句を見つけることもできます。が、こればっかりは、駄目なひとは駄目でしょうし、わたしもオールOKとは云えない。確かに美しい文章だけど、それは宝石ではなくとても綺麗なガラス玉であるような気もするから。しかし、ガラス玉であっても美しいのは事実だし、それを否定するほど狭量でもないつもりなので、まだまだ、このひとの本を読んでいくことでしょう。

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