「END& エンドアンド」鈴木志保(WAVE出版)



 気がついたらカルト作品になってた「船を建てる」の作者による、自選単行本未収録作品集です。


 これまでの作品リストも掲載されていて、それで知ったのですが、「船を建てる」がデビュー作ではなかったのですね。この本には、「船を建てる」以前の作品が2作、それ以後の作品が6作収録されていますが、前者は中篇であるのに対し、後者は断片的な短編。ということで、内容自体は半々という印象です。で もしかし。正直云って、「船を建てる」以前と以後とでは、こんなに作品が違うのか、と。以前の作品にも、作者独特のスタイルは溢れているものの、人間の描き方(描写の意味でも描線の意味でも)やストーリーの組み立て方は、失礼ながら、あの時期の「ぶ?け」にいくらでも並んでいた、ポスト清原なつのというかポスト吉野朔実というかのテイストに溢れていて(ちゃんと読んだことはないのですが、楠本まきにも似てるんじゃないかと思う)、いくぶん、赤面するような感じの作品です。このあとに、人間じゃなくてアシカを描いたのは大正解と思いましたよ。
 それが、以後の作品では、人間の描き方も格段に違ってきて、わざとらしくない感覚にすべてが彩られて、美しい限りの作品になっています。まさに鈴木志保じゃないと描けない世界と構成に、ため息が出る思いになりました。作風から、独自のスタイリッシュな美意識で進んできたひとじゃないかと感じてきていたのだけれど、それだけではなく、様々な要素を学んで取り込んできて余分なものをそぎ落とした結果として到達したのが「船を建てる」であったのだなと分かりました。ファンとして、それがとても興味深かったです。

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