「ひでおと素子の愛の交換日記(4)」新井素子・吾妻ひでお(角川文庫)


 古本屋で見かけたのでつい購入。この頃の吾妻先生の絵は、本当に絶好調で可愛くて大好き。たしか以前にも読んだことはあったような…とぱらぱらめくっていたら、新井素子のエッセイ史上に残るであろう「正しいぬいぐるみさんとの付き合い方」が掲載されていました。うわ、他の部分は全然覚えてないのに、これはようく覚えている。もしかして後でこれだけ別のエッセイ集に再録されたかなと検索かけてみましたが、どうやらそうではないらしい。そんなに印象深かったか、そうだろうな。いま読み返しても、新井素子は頭がおかしい。いや、悪気はないです。キチガイ呼ばわりはいけないと思う。ご本人も「異常な内容」と述べておられるくらいだし、なにかが間違っていることはご承知な内容だろう。それがどういう内容かといえば。
 「ぬいぐるみさんは生物でないけれど、いきもの」
なんですよ。その論法によって語られる人間の幼年期から青年期以上のひとへのぬいぐるみさんとの付き合い方、禁止事項などを滔々と語るこの文章の持つ破壊力については、添えられた吾妻先生のカットがすべてを語ります。ひとこと「はい、すでに多くの死人とパンチドランカーを出してしまいましたね!」これ、ホントですよ。さすがSFマガジンに掲載されただけあります。この思考展開こそはまさにSF。すこしふしぎ。すばらしく不可思議。
(あの、ここで念の為に…わたしは少女時代、新井素子の大ファンでした。そして少女を遠く過ぎ去ったいまとなっては、新井素子のあまりにもあんまりな変わらなさというか固定された自意識の奔流ぶりに圧倒されて、最近の作品に手が出せずにいます。ここらへんいつか語りたい…)。

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