「サイクルリサイクル」メトロノーム


 メトロノーム約1年ぶりのミニアルバムです。前作の「Electric travel」も良かったけど、今回は良い意味でコンパクトにメトらしさがまとまった一枚の気がします。うん、なんかよくまとまってる。破綻がない。曲的にわたしが好きなのは「雨」「絶望さん」「薔薇と紅蓮」かな。「絶望さん」は、最初はちょっとオーケンを連想したのですが、まるごと聞いてしまえば、あまりにもメトっぽすぎるそのタイトルと楽曲に、すでに確固たるスタイルを築いてしまっているかれらの自信を感じました。ライブが実に楽しそうですね。
 通常版限定の「薔薇と紅蓮」について。リスカ系というかなんというかという、いーかーにーもな歌詞を先に読んだときは、正直云ってお腹いっぱい感がしたのです。しかしそれがドラマチックかつ可憐な曲と合わさって聴こえてきたときには、素晴らしいと思いました。「ハーメルン」以来の感動です。
 混迷した思春期を過ごす女子男子にはクリティカルヒットであるとは思いますが、わたしは、メトを、迷いつづける十代二十代の為の音楽、と決めつけたくは無いです。むしろ、そこを抜けたあとに「時間がたっても大人になっても自分はあくまで自分のまま」という現実のまえに立ち尽くす世代の支えにもなるのではないかと思う。
 大人になってよいのは経験値が増すことだとわたしは思っているけれど、しかし経験値があったところでどうしようもない事態というのも存在するわけです。そこでそれを他人のせいにも世界のせいにも出来ないことを知るのがこれすなわち成熟なのでしょう。が、成熟には未だ至らず、むしろ別の方向に伸びていきそうな迷いっぱなしの魂のそばでテンポを添えてくれる存在としてのメトロノームというのも、わたしとしてはありだと思っています。少なくとも、わたしはそういう風にメトロノームを聴いていると思いました。

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