「リビドー・ガールズ 女子とエロ」辛酸なめ子・雨宮まみ・スラッシュ君ほか(PARCO出版)



 ボーイズラブ、ティーンラブ、ロマンポルノにAVやスラッシュに至るまで、いわゆる女子が消費者として楽しめるエロの世界を広く追求した一冊です。それぞれのジャンルについて入門的に概論とおすすめを紹介されているので、興味があるひとへの入り口にちょうどいい感じのガイド本です。
 女子とエロって、要するに「誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい」アレではあるんですが(だから語るひとが実践バリバリのひとのモテ本か、マニュアルか、非現実的なファンタジーか精神論に分けられるような気が…わたくし、女子の欲求を満たす女性向けのエロ小説の先端は、ハーレクインロマンスではないかと思っております)、「そもそも女子にとってのエロはなにか」などという精神論は抜きにして、「こういうものもあるよ」「こういうのが楽しめますよ」「こうやって入手することができますよ」というガイド面を強くして、「理屈はいいや、だってこのジャンルに萌えるんだもん」な姿勢で通したあたりが、生臭さを排除している要因かと思われます。また不思議なことに、そのほうがかえって、一冊を読み終えたあとには、その精神論への手がかりもつかめたような気になったりします。  
 個人的に面白かったのは、思春期女子の健康的なリビドーに、不安定な年代ならではの愛情欲求がからみあうとこんな迷宮にたどりつくのだなあということがよくわかった「エッチ系少女マンガの現在」(新条まゆの「快感フレーズ」とすぎ恵美子の「げっちゅー」を並べて紹介して「併せて読むと、ビジュアル系ミュージシャンが処女の脳内でどのような位置づけになっているのか、おぼろげながら理解できそうだ」という一文には笑った)、海外版やおいであるスラッシュ及び、国産やおいがどのように海外で受け止められているかについて丁寧な解説をしている「やおいとスラッシュが出会った時代にツカまって」(非常に興味深いアンケート内容のなか、やおいにはなくスラッシュにある魅力として、日本ではドラマ「騎馬警官」を扱ったスラッシュがまったく書かれていなかったから仕方なく、と答えているかた…驚愕しました、ここにも同じ萌えがいます…で、でもわたしは出来ればレイは攻め(以下略)です。
 もっと色々なジャンルで女子が己のリビドーについて語れたら、面白いのにな、と思います。なにも興味本位や自分のリビドーを満たす意味でなくても、セクシュアリティって人間を語るから、わたしにはそれが十分に面白いのです。…え?わたしのリビドー?…できればレイは攻めで(以下略)。

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