「かよちゃんの荷物(1)」雁須磨子(竹書房・バンブーコミックス)



 購入したときは、なんだかまとまってないなーと思って一読でそれきりだったものの、再び読んだら面白かった。そういう意味では意外作。
 雁須磨子独特の、ごちゃっとした描き文字と乱雑すれすれの描線が、初読だとそう思わせたのかもしれません。いえ、案外、「三十路未婚女子の日常あれこれ」がちょっと身に沁みて目を滑ったのかも(がっくり)。フリーターだったり無職だったり、太ったり痩せたり、親と微妙に揉めてみたり、と主役のかよちゃんの日常はまさに等身大でありながらも、微妙に変な感じがするのは、雁須磨子の味かなあ。かよちゃんの一生懸命さも空振りさも、自分可愛い感じも、どれも身に覚えがありつつも、「いや、わたしはここまでこうじゃない」と思ったり。
 そんなわたしが感情移入するのは、かよちゃんのお友達のキリキリしたOLのひとみちゃんの方かもしれません。ひとみちゃんが、男とうまくいかなかったときの自分の、キチがったつぶやきを「キモい」としつつも「なんかふと/かわいそおなよおな気がして」「その頃の自分がさ/キモ!でかたづけられちゃうのがさー/どーにも/…あわれだなってなんか」というモノローグと過去の回想シーンが、クロスするあたりがなんとも。じんとしました。
 同時収録の短編では、二歳年下の男子と同棲している27歳の女子のもとに、男子の実家からざぼんが送られてくる「さざんかざぼん」がしみじみいい話でした。こういう他愛ないけど、心が揺れる日常の瞬間を切り取るのが、雁須磨子は本当に巧いなあ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする