「オレたち14帝國Vol.3~風間のジョー」(名古屋アポロシアター)感想

 赤い光のなか浮かび上がるリッターたちを見るたびに、これまでに何度も思ったことをまた思う。どうやったらこの鮮やかさを思い切れるだろう?

 オンブラッタは、やはりカッコいい。しかし、草薙大佐のソロを見るたびに、以前に友人がつぶやいた「草薙大佐はそんなことをする前にコードをちゃんと押さえれるようにならないとね」という言葉を思い出して笑ってしまう。いや、それでも以前よりはずっといい感じになったから!(フォロー)。そして、五藤中尉がベースソロで白手袋を外す日は来るのかしら(笑)。

 最初の緊迫した戦闘場面にて。まずは一歩も退かず、負けを知らない立花大将というキャラ設定にひとりで咲く。そうなの、大将は素敵な軍人なの、一人称は「わたし」なの。お友達はここで「なんで大将差し置いて中将が指揮なの?」と思ったらしいけど、「そりゃ大将は全軍の指揮とかできないだろう」と素直に答えてしまったわたしは筋金入りの大将ファンです。本当です。適材適所。しかし珍しく戦争してる(帝國の戦争は、たいてい圧倒的な危機か逆に楽勝モードかのどっちかのような気がする)なあと思ってたら、風間少佐と定光寺中将のやりとりが。懐かしい議会派とか貴族とかの言葉ががんがん出てきて、嬉しかったのだけど、さらにあの「そのほうが面白いからだ」が。Vol.6ですね!(咲)。あの元帥と大将の秀逸なやりとりを彷彿とさせるキーワードにときめきました。いまのこの世界では、皇帝陛下の夢と大いなる意志のどちらが優先されるのだろうと思ったりもした。皇帝陛下の代理人たる皇認独裁官である元帥が、いるけれどもいない(少なくとも戦闘には参加してないみたい)ここでは、皇帝陛下の存在はクローズアップされず、大いなる意志のほうに焦点が定められる。ここのやりとりの、観客と舞台のあいだの段差がふと存在しなくなるような、舞台の空気が観客側に浸出してくるようなあの感じがすごく好きです。メタメタしい。

  しかしそれどころではありませんでしたよ。エスターリヒクーデターが。エスターリヒクーデターが。エスターリヒクーデターが(三回繰り返すなわたし)。いやでも、特別だからエスターリヒクーデター。これまでの式典でわりと正面きってやったのは「ライヒス・リッター・ステージ」でしたが、あれが元帥が主役をはる表部分であったなら、これはその陰で見え隠れしていた立花と定光寺の葛藤という裏の部分でもありますね。ていうか、もうこういうことやられたらたまんないから!大丈夫、18に見えたよ!(大将は)そしてその裏側でもただ「ヤツ」と語られるだけの元帥の存在感が大きい。本人の姿こそ見えずとも、ここにいる感じ。ノイエラント革命は、正直云ってあのVol.5の冒頭、立花と定光寺が元帥を助けるくだりだけでもう十分なぐらいなんだけど(あれが一番のキモなシーンだと思うので。でもまさにあれにたどりつくまでの過程が今回のシーンなのですね)、エスターリヒは登場人物も多くて派手なぶん、よりドラマがありますね。

 とかいってたら、中将が!記憶喪失に!かわいいかわいいかわいい(爆笑)!いつ「もうすぐヲイラの村のお祭りなんだ」と言い出すかと思ったくらいに、かーわーいーいー。記憶喪失なんて、しかもそこで頼るのがアックスくんなんて!回想シーンの皮肉で微妙にファナティックな感じの中将と、現在の気弱な感じの中将のギャップがひたすら可愛いです。萌えます。ちょっとパン屋思い出した(笑)。それにしてもアックスくんは前回以来、本当に化けましたねえ。この微妙な傍若無人感は、これまでのリッターになかった味です。そして中将が秘密兵器というと、たぬ吉くんをつい期待してしまいます(いないから)。ここでの風間少佐とのやりとりもいいですね。こういうちょっとしたやりとりで、本当にキャラが立つ感があります。

 しかしあの。わたしは立花大将の熱烈なファンでありますがその。正直、あそこで歌は要らない…。オールナイト14への切り替えとしていいのかな?でもいつも思うけど、キーは下げたほうがいいのでは…。しょせん立花大将の歌でいちばん好きなのはと問われたら「Vol.5の昴」と答えるわたしにはセンスがないのかもしれません。ごめんなさい。わいわい系の曲をやるわけにもいかないのは分かるんだけど、かといってしっとりバラードも、あわせるの難しいんでしょうね…。

 オールナイト14。非常に雰囲気が懐かしい感じでした。だらだらなのか進んでるのかよく分からないあの感じが実にオールナイト。天使が通りかけては足をひっこめてるような(笑)。「忘れん棒」とか「記憶なくし機」とか実にドラえもんくさかったりするとこも。「記憶がなーい」の中将がプチ照れてるのがおかしかった。しかし前半から、なんであんなに頬がデーモン閣下なのかと思ってたら、太ってたんですね…。
 なりあがり。正直に云う。ハルキングになってからのなりあがりは、本当にわたしを楽しませてくれる(それまでは!?)。細かいネタが的確な感じ。なんていうかな、オタク受けはここに集中しておけばいいよ!みたいな(笑)。あとはカノーンさまのマントが復活してくれたらいうことなしだ。

 加納中佐が倒れるとカノーンぽいという話。やっぱり気づいてたか!(笑)わたしは懐かしのVol.15の秋山とのやりとりを思い出しました。シリアスだとぎこちないのは、まあ時と場合によりと思うんだけど(笑)
「やってよ」も「おしえて」もなかったけど、それあったらちょっとぐだぐだになったかな?と思わないでもなかったので、いい感じのオールナイトでした。正直、よほどの神が降臨しない限り、オールナイトはシンプルでテンポよくが望ましいです。
 
 後半。明るくなったとたんに爆笑。椅子に座って回されている中将と笑顔がキラキラしている風間少佐、含み笑いで紐をひっぱる大将、という絵柄の組み合わせが素晴らしいです。ここでは歌もよかった!歌詞もストーリーに沿ってるし、曲も可愛い。あの「火事だー」の曲みたいに、式典内にうまくハマってると演奏も違和感なく楽しめるということをここで再認識しました。

 回されてるのが終わったあとも、マジつらそうな中将に爆笑。あとで気づいたけど、これも「オレたち?」になってからずっと継続されてるイジメというかなんというか(笑)の流れなんだけど、自然すぎて気づかなかったよ!必然性って大事ですね(笑)。そうか、ここで「立つんだ」になるかなーと思ったら、立花段平登場。咲いた。マジ咲きした。これを予想できなかったわたしのバカ!(爆笑)とてもシンプルながらすさまじい破壊力。立花大将カッコいいー(はあと)

 しかし、アックスくんの階級は謎のままなのね(笑)。

 ちょっとあっさりすぎるくらいに風間少佐に記憶喪失がカミングアウトされたとこで、記憶を取り戻すため、過去に戻る流れに。この微妙な過去の再構成、過去がかいまみられる展開はわたしの大好物でございます。こういうかたちで幻創論を施行できるのは「小官、あれ脇で見てたけどけっこう簡単なんですよ」と言い放つことが出来る風間少佐しかいないしな(笑)。本当にあの「行くぞ!」は可愛い。

 なんといっても、ここの白眉は立花大佐でしょう!「過去だの未来だの、分かっとらんと思っとるの?」には爆笑とともに戦慄が走りました。大将の立ち位置がここで変わった。過去や未来の言葉を聞きながら、それでも世界が変わらずにいるのは、これが立花大将だからなのですね。たぶんすぐ忘れるからいや違う。「未来から来た奴の言葉は、さっぱり要領をえん」ってすごいよ。分からないの。未来からの言葉だから(また訪問者たちはそれを親切にかみくだくわけもないから)。なのに観客には分かる。イラっとしながらも、その要領をえない言葉から必要なものだけを汲み取るその姿勢が不自然でないのは、立花だからこそ。うわあ、すごいなこのキャラ立ち。ここで(おそらく)忘れん棒で殴られた中将が記憶を取り戻すんだけど、オールナイトで振られたネタなので分かるものの、なぜ未来の定光寺中将が発明したものを立花大佐がもってるのかなとは思いました。まあこの流れが美しかったからいいや(笑)。

 元の時代に戻ってからは、オールナイトのネタフリがふんだんに使われる結果に(笑)。立花大将の危機がどうやって救われたかも気になるけれど(過去への介入が影響した感じはないし)、あの全滅(笑)を、春木大佐の「一時はどうなることかと思いました」という一言で納得させたのはすごい処理だ(笑)。うん、どうなることかと思った(笑)。

 少数精鋭のライヒスリッター。美しくまとまったあと、すっごく素直に拍手した。正直云って、涙が出そうだった。嬉しくて。途中で(エスターリヒクーデターのくだり)あまりの面白さにおかしくなりそうだった。材料自体がすごく好みだというのもあるんですが、このお約束いっぱいのなかでもところどころにルール違反すれすれの感がある感じ、物語の枠内に収まりきらない感が、すごく帝國なのですね。すごく帝國なんだけど、過去の再生産ではなくて、ところどころに新機軸が見える感じ。そういう意味で個人的に嬉しかったのは、人死にとか泣きとかそういうのがなかったこと(ごっぱーとかはあったけどな)。いや、そういうドラマ性を否定するわけじゃないんだけど、いまのこのシンプルな帝國にはそれ、必要ない感じがする。ナンセンスでメタメタしくってコンパクトで狂騒的でもありつつも、大いなる意思のもと「少数精鋭」でなりたつ存在であるいまの14帝國。わたしはこれまでの14帝國をずっと見てきて、いまの帝國がいちばん好きです。幸せなファンというのは常にそうであるのかもしれませんが、過去も含めて、いまが好き。
 
 短いぶん、物足りない感があるひともいたかもしれませんが、そこはそれ。膨らませてゲップが出るより、あとひとくちのほうがわたしは好き。なにごとも「腹八分目」というではありませんか(笑)。シンプルだからこそ見えてくる、浮かび上がってくるキャラクターの関係性と背負ってきた歴史に魅了されました。
 
 本当に楽しませてくれました。ありがとう第14帝國。


素晴らしかった。泣きの式典じゃ全然ないのに、嬉し泣きした。
定光寺中将、あなたどれだけ帝國が好きなんですか。
すごいなあ、と素直に思った。これはさしずめ、有り得たもうひとつの14帝國。Vol.6くらいのあとからの、起こり得たもう一つの世界。けれどもこれまでを否定するわけでは勿論なくて、みんながみんな、過去を含めて帝國を愛している舞台。大好きです。
これまで失ったものも得たものもすべての経験があって、いまがある。すべてから目を逸らさずにありがとう14帝國。わたしはそうつぶやきたい。諦めずにいつまでもここにあってくれてありがとう14帝國。
わたしは14帝國を愛しています。(2007.8.12追記)

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