DVD感想「DEMON’S ROCK SHOW!」(デーモン小暮閣下)


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 D.C.9年(2007年)の5月から6月にかけて行われた「DEMON’S ROCK TOUR」ライヴの模様を収録とありますが、おそらくは、2007年5月20日に、東京恵比寿リキッドルームで行われたものだと思われます。このツアーは大阪・名古屋で3本、ほぼ同じ内容のアンコールツアーを2本、合計5本見ているわたしですが、こうやって改めてDVDで見ても、実に飽きない内容です。
 ライヴの様子自体は、何度も見ているものなので、仕掛けに驚くとかは無いのです。が、見ていて、すごく興味深かったのは、DVDは生の替りにはならないんだなあと実感できたこと。いや、そりゃ当たり前だと思います。何台ものカメラで撮影されていて、メンバーの姿も押さえるところはきっちり押さえられ音も美しくバランス良く収録された、そんなDVDを家でくつろいで見るよりも、メンバーの姿はひとの頭越しにちらちらと見るしかないうえに音も大きすぎるんだかなんだかで歪んで聞こえ、熱いは疲れるわしんどいわのライブハウスで見るライブのほうが、どうしても100倍良いんです(笑)。そう思ってなかったら、わたしはいまこんなとこにいません(そしてきっと貯金とかが)。でも、そう頭では分かってはいても、これだけ内容自体は保証済で、ちゃんと編集されたDVDであるにも関わらず、思い出のなかにあるライブのほうがずっと良い。その事実が、やっぱり新鮮でした。もちろんわたしは、このライヴ自体を生で経験したわけではないのですが、他の会場に比べて、そう内容に遜色があったとも思えない。ハコの規模やバンド自体によって、左右されるものかもしれませんが、やはりライヴは実際に参加しないと分からないものだなあと強く感じました。
 とか思いつつ余裕を持って眺めたものの、もちろんこのDVDはDVDで楽しいのですよ。ならではの見せ所をいくつか。まずは開場前の陰アナウンスをする閣下の様子なのですが、原稿をなぞりながら語る閣下のいと愛らしいことよ。時々、カメラを覗き込むその視線がまた微妙に上目遣いできゅんきゅんします。で、BGMが終わらないうちにこのアナウンスを終わらせることが出来た会場は、果たして存在したのかな(笑)。
 しゃべりが楽しいライブなだけに、もうちょっと声が聞き取りやすく収録されていればいうことはなかったものの、閣下のトークはやはり楽しく(とくに「あったんだカメラ」は7年越しの熟成と閣下ならではのうっかりぶりと細かいくすぐり、小道具に至るまで、実に一級品のネタだと思います。閣下、このネタであと5年はいけます)、また、ネタ満載の「文明退化の音がする」などでも、コーラスがなにを言っているかがはっきり分かって、なおさら笑えました。もちろん、閣下以外の素敵メンバーをようやくじっくり目に入れることが出来たこと(ほら、画面では閣下が映ってないことがあるからね。自分の視神経と違うのはそこだ)も良かったですね。そこらへんはやっぱりDVDならでは。
 あと、分かってはいたけれど、閣下の振りの愛らしさとかかわゆさとかキュートさとかを何回も繰り返し確認が出来るのが素晴らしい。「MyRevolution」における「駆け出す姿/キュンとするね」は、なんだあれは。ぶっちゃけ、閣下宗へのオカズか。稲穂で頂きます。「翼の折れた天使」での、「16/初めてのキス」での喧太さんへのちゅが、うまく成功して二人で笑ってたのが、かわいいったらもう。
 このツアーでの閣下は、前髪が一本前に垂れ下がり、額にヒンディぽいオシャレもしていて、本当にキュートです。衣装もどれも閣下にお似合いで、いやもう、わたし、いまの閣下って本当に理想の閣下(笑)。そりゃ、目の上が深い蒼で、金色のトンガリはどこまでも高く、後ろ髪は漆黒で真紅のリボンでまとめてる、さながら白雪姫のような時代の閣下が永遠のナンバーワンですが、あれはもうあの時代にしかいないからね。ちなみに、閣下は美しいと繰り返し主張するわたくしですが、閣下は姫ではありません。閣下は高貴なかたでありますが、姫というよりはもうちょっと男性的で野生の匂いがします。偶然の産物で生まれた自然の彫刻が、どんな人造物もかなわない可憐を持って完成されているように、閣下は野生の芸術品です。ああ野生の王国。自分でもそろそろなにを云っているのか分からなくなってきました。
 まあそんな感じで、ずっとにこにこと余裕をもってながめていたわけですが、大好きな「ハート8」あたりからときめきが止まらないのは云うまでもなくなり、とうとう本編最後の「AGE OF ZERO!」は。いやもう、これは。
 ライブでも何度も涙ぐみそうになって圧倒された。その世界がDVDでも再現されているなんて驚きです。派手な仕掛けがあるわけでもなく、とくに目を奪うような効果が添えられているわけでもない。なのに、あの閣下がいました。スティールドラムをたかたん、と音高く叩きながら歌う閣下。素晴らしく高貴で、高みに向かう閣下。「Beautiful city,Beautiful pity, no Reality」という歌詞の持つ軽みと真実よ。「I waner be a happy man」の閣下らしさよ。「not only」と重ねることを忘れることが出来ない閣下の業よ(ここ笑うところじゃありません)。「!」には全然ぴんと来なかったわたくしなのに(なんせこの閣下宗がアルバム買ってませんでした)、この曲は本当にすごい。おそらく、CDで聴いてもそれほどでないだろうし、再現率は高いとしても、このDVDで見たとしても、初見のひとには、それほどのものかと感じられることでしょう。もしかしたら、この曲とこの曲を歌う閣下がここまで琴線に触れるのはわたしだけなのかもしれません。でも、この曲は紛れも無く現在の閣下のコア。聖飢魔llより一歩進んだ地平に向かう閣下の魂のゆらめき。それがこんなにも美しくまっすぐで、光に満ちていることが、わたしにはまぶしく感じられてならない。やっぱりこのひとは違う。このひとは本物です。
 そしてなにより、ラスト近く、スティールドラムを激しく叩く閣下を、メンバーみんながちらっと見て、微笑んだのにはやられた。閣下が愛されてる。すごく愛されてる。嬉しかった。
 
 続くアンコールの「限界LOVERS」や「Rendezvous 60 Microns’」の楽しさも良かった。そしてここで閣下がカメラマンをステージに上げて客席を映していたのです。こういうことするバンドは珍しくないけど、いつも客席が映ると、変に照れくさい気持ちになったり、目をそらしたい(いやその)感じになったりすることが個人的には多いのです。でも、閣下のお客さんは、みんな実に良い顔してたよ!閣下とともに歳を取り、未だに閣下になにかを感じつづけるひとたちは、みんな閣下と同じ空間にいると、素晴らしく幸福そうで楽しそうだった。自分もこんな良い顔でいられたのならいいなあと素直に思ったくらいでした。
 あ、例のアンコール、危険な曲は素敵な加工が行なわれ、参加したひとにははっきりとわかるものの、事前知識がないひとはおそらくもしかして…?と思う程度の状態で、しかししっかり残ってました。時事ネタだからね!(笑)
 そしてラストの「REFRAIN OF LOVE」。実はわたし、曲目を最初にざっと見たとき、ライブでは一曲目だったこの曲が見当たらず二曲めにあたる「BURNING BEAUTY」が一曲目になっていることから、「そんなに歌詞を間違えたんだ」と素で納得していました。いや、そうじゃなかった、ごめんね閣下。そんなに間違えてたのは収録されていない「Return to Myself」だね(一番の売りになるはずのこの曲がカットって、閣下、どんだけ…)。しかし、この「REFRAIN OF LOVE」はよかった。あえて最後にもってきて正解ですよ。紗幕に揺れる閣下の影と、浮かび上がるクレジットに、こんなに似合う曲はない。ちょっと感動しました。
 ただ、リーフレットには多少不満が…。DVD内では云っているものの、いつどこで行なわれたライブか記載がないこと。あと、おまけCDのトークについてもそれが欲しかった。トークは前に説明があるのですが、曲はどこのライブでやった曲かまで記録しておいてほしい。しかしこのおまけCDですが…、いやもう閣下は本当にどこまでも閣下で、一生ついていきますとしか云えない内容です。素晴らしかった。わたしの愛している名古屋でのカブトムシネタもちゃんと収録で感動です(すいません、一回聞き逃してました)。「タマゴヲカエシテクダサイ」は歴史に残るよ…。
 というわけで、このツアーの記念として残しておくにふさわしい出来のDVDだと思いました。閣下宗におすすめなのは当たり前ですが、やっぱり聖ll信者には見て欲しいな。FTAもCANTAも見ていないし聴いていないわたしが云う義理はないかもしれませんが、「いま」閣下はこうですよ、と教えたい気持ちです。聖llという過去をライバルにもち、しかし閣下はいまこうやって生きていますよ、と、その存在に痺れたことがあるひとに見てほしい感じがするDVDでした。

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