「壊れた少女を拾ったので」遠藤徹(角川ホラー文庫)



 「姉飼」の作者による作品集です。5編の独特な短編が収録されています。どれもジャンルでくくってしまえば、ホラーないしは奇妙な味なのですが、相変わらず、イメージの喚起力がハンパでありません。ただ、その勢いのほうを重視した結果なのか、論理的な整合性に欠ける部分もあります。そこが、気になるひとには気になるかもしれません。
 わたしには、文字通り臓物をすり合わせながら愛し合う、せつない十代の男女の惹かれあいを、現実を超越したスプラッタで描いた「赤ヒ月」、少女の不気味かつ美しい造形が生み出す効果が素晴らしい「壊れた少女を拾ったので」の二作が特に気に入りました。どちらも、肉体的・精神的な支配/被支配、嗜虐の関係を描いた色合いが濃く、その情念の絡み合いが匂いたつようです。云っておくなら、前述の設定や物語の整合性という意味では、どちらも実に無茶な出来でもあります(笑)。しかし、それを補ってなおあまりあるほとばしる情熱が素晴らしかったです。中途半端な説明や、謎明かしを求めるのはむしろ野暮かもしれない、そんな気にさせられる作品でした。
 
 あと、どちらも、はじまりの一文が良いです。引用しておきますので、気になったかたは、ぜひ一読を。
 「高槻先生が生徒を食べていた。」?????「赤ヒ月」
 「明け方、壊れた少女を拾いました。」?????「壊れた少女を拾ったので」

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