「哭きの竜 外伝(5)」能條純一(竹書房・近代麻雀コミックス)



 熱くも美しい漢たちの生き様を描くことでは定評のある能條先生の代表作「哭きの竜」。その外伝というか続編の最新刊です。いやあ今回も竜が美しかった。
 まったく麻雀が分からないわたしなのですが、まあ超能力ものでもロボットものでも、必殺技の名前が出たら敵が倒れてそれでおしまいになるじゃないですか。そんな感じで読んでます。竜がどう強いのかも、麻雀好きなひとになら納得できる理屈で語られてるのでしょう。きっと。たぶん。おそらく。
 しかし「哭きの竜」といえば、目つきの悪い三白眼のお兄ちゃんが「ふっ」と息を抜きながら「あんた背中煤けてるぜ」とかいいつつ、麻雀を打ってる途中にヤクザが抗争してるだけのマンガと思っているひとも多いでしょう。否定はせん。でもネタ漫画じゃないんですよーとわたしは訴えてみる。ストーリー漫画として優れてるんだってば。
 今回の巻にいたっては、竜の出生の秘密に関わる展開が現れて、麻雀と抗争以外のファクターが出てきました。そうそう、能條先生はケレンだけじゃなく、ストーリー展開でもきっちり読ませるプロなのですよ!きっちり読ませようとするものがこれか、と読者の度肝を抜くこともあるけどな。でも、なんというか、向き不向きより前向きか後ろ向きかなんだ、あとは好きか嫌いかだけで決めるのも重要だ(KIBA)の精神で、未読のかたにもトライしていただきたいもの。もう二度と出逢えない、かけがえのない想いを止めないで(意図していた以上にハマるな、この歌詞)。
 
 とにかく、いつも云ってますが、本当に絵が美しい。あれだけの顔力を持つ濃いキャラを描いていても、その線まで汚れることはない感じ。主役の竜にいたっては、どのコマでも恐ろしいくらいに美しい。そこだけ気温が低い感じ。こんなにツヤベタが似合う七三頭はあるまい。今回の巻では、記憶を取り戻したことになって、それ以後の竜に表情が浮かぶようになっていて、その眼力といったらただものではありません。ただものでないことは最初からそうなんですが、いやもう。
 あと、最近の能條先生は「ばりごく麺」の麺太様といい、今回出てきた「白虎」といい、眉毛の先を三又二又に分けて伸ばすセンスの男子がお好きなようです。麺太様も白虎もそれでいいのですが、うっかり竜に試さないで頂くことだけは切に願います。 

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