「やまだ眼」佐藤 雅彦・山田 一成 (毎日新聞社)



 
 お笑い芸人「いつもここから」の山田一成と、数々のヒットCMを生み出し、現在は大学教授となっている佐藤雅彦の共著です。「世の中の微妙な真実」をつぶやく山田一成の一言に、佐藤雅彦が丁寧な解説を添えていますが、それがとても効果的な構成となっています。佐藤雅彦って、何冊か読んだけど、怖いくらいに頭が良いひとだと思っています。なんだか、見えすぎてるひとだなあと。
 わたしは「いつもここから」自体はとくに好きでも嫌いでもなかったんですが、前書きの佐藤雅彦の文章が、その着眼点とその上手な面白がりかたをシンプルかつ分かりやすく紹介してくれていたおかげで、単なる「あるあるネタ」と混合することなく、その独特さに最初から目を向けることが出来た感じがします。以下、いくつか気に入ったネタを。
エレベーターまで送ってくれた親切な人が、ドアが閉まる瞬間、真顔にもどるのを見た。」
「仕事のできる女性が、実家でお母さんに、わがままいっぱい言っていた。」
「丁寧で謙虚な口調だけど、すごくずうずうしい事言ってる人に、たまに会う。」
「住んでいる場所言ったら「何で?」と言われた。」

 ひとつひとつに笑ったり、腑に落ちたり、ちょっと暗い気持ちになったりしながら、面白いって何だろう、そんなことをふと思います。一つの意見や言葉に「あるある」と同感させるのは、一見、とても簡単なことに思えるけど、実はそれを選別するザルの網目の寸法を見極めるのは、とても難しい。多種多様な人間の生活のなかから、誰かの「あるある」を掬い上げるということ。それが時に笑いを呼んだり、あるいはしみじみとした共感を呼ぶ。その共感が笑いにつながることも幸せだけど、笑ったあとで、なんとも言えない余韻が残ること。それもまた「面白い」ってことなんだろうなと思いました。

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