「ヘルシング(10)」平野耕太(少年画報社・ヤングキングコミックス)



 とうとう大団円を迎えました。すさまじい勢いのまっすぐな作品だけに、本当にちゃんとしたかたちで終わるんだろうかと思わないでもなかったのです。が、いざ最後のページを開いてみれば、とてもまっとうで美しいラストとなりました。キャラクターも世界観も立ちまくっている作品だっただけに、このシンプルな最後には、いろんな意味で物足りないかたもいるかもしれませんが、それはなんていうの?外伝とか、いっそファン同人誌とかで補完してしまえばいいんじゃないかな(笑)。
 それにしても、実に堂々たる終結です。諧謔激しい作者の意図は定かでなくとも、この終わりだけは最初から決定ずみだったのではと思わせるような、一瞬の間と共に広がるエンドマークの美しさに見惚れる思いです。しかしここにたどりつくまでに、10年もかかったのですね…。10年かけてこの勢いと質を維持するだけでなく向上させた(失礼ながら、第1巻に比較しても、明らかに巧くなってるもの…)作者は賞賛されるべきで、真面目に年末のオタク大賞あげればいいと思います(いらないと言われるかな)。
 なんだか久しぶりに、ちょうどの長さでまとまった、ひとつの終わる物語を読むことができたような気がします。これから新たにこの物語を手にとって、1巻から読み始めることが出来るひとに幸いあれ。好き嫌いはあると思うし、読む人を選ぶものであることは確かですが、それでもどっぷりとひとつの世界に浸って、荒廃したロンドンの路上に吹く風を感じることができるなら、それは素晴らしいマンガ体験になるはずです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする