元帥・鳶丸の「宇宙と恐竜」DRAWING THEATER(大阪RUIDO)

 翌日。眠った記憶がないままに目覚めると、すでに酔っ払ったときのわたしの扱いに長けた真夜さんが(そんなものに長けたくはなかっただろうな)、「まだしゃべるー」とかいってるわたしをベッドに放り込んでくれたことを教えてくれました。最近、酔ってやらかすと怖いのは記憶が飛ぶことです。飛んでるくせに、コンタクトは外してあったり、寝る格好にはちゃんとなってたりするのです。昔は記憶が寸断されるところで綺麗に沈没していたのになあ。年齢って怖いなあ。12時チェックアウトのありがたさが身にしみました。
 今日は「宇宙と恐竜」二日目ですが、なんせ19時開演のため、大変に時間があります。なので、れっつお買い物ツアー。真夜姉妹とわたくしめが大変にご贔屓しているお洋服のブランドがございまして、今日はその大阪店を順に回るという流れになりました。が、さっそく、なんば店についたあたりで、わたしがもう、訳がわからない。この服を選んで、この服を選ばない、その基準が見当たらない。買わない理由が思い当たらない(とりあえず財布あたりを思い当たるといいと思うよ)。駄目駄目。
 くるくる目が回りそうになったあたりで、二日酔いの波が襲ってきて、ちょっと休憩。胃のうがいを数回繰り返しました。この日、二十回は繰り返した言葉をつぶやきます。もう若くない。年齢って怖い。とりあえずうがいから帰還してのち、一着素敵なキャミを購入しました。ほら、験担ぎ(意味が分からない)。
 そういえば最近のわたしは、なぜか選ぶもの選ぶものがです。新居もかっぱ色で埋まっています。なので、それはどうかと思ってカーキ色にしてみました。濃さが違います。しかし体調の悪さはいかんもってしがたく、お昼ご飯前にうがい。後にもうがい。もう本当に若くない。大変に反省いたしました。酒のうえでの反省は、どうしてこう今後に反映されないのか研究している心理学者はいないのか、こんど検索をかけてみようかと思います。
 なんば店のあとは、堂島へ。そこでも一着キャミをお買い上げって、わたしの胴はひとつなのに…。ていうか、キャミを見ながら「引越しのときにこのブランドのキャミが嫌になるほど出てきたとか云ってたはずなのに…。そしてそのままうめだ店って本当にツアーだな。実はそろそろセールなので、Kちゃんなどは、名古屋店のセールに合わせて仕事の算段をつけています。大阪店で下見をして名古屋で買うんだね!わたしもセールに参加したいのは山々ながら、地元に店がないのですな。あればいいとはちっとも思いませんが。そしてうめだ店にて緑のスカートとようやく黒の羽織物を購入。今後、ライブ会場でピーターパンを見かけたらそれがわたしかもしれません。ていうか「大阪で入った店、全部で一つは買ってるね」って、真夜さんが云わなければ気がつかなかったのに!
 そんなこんなのあと、無事にライブ会場に着きました。でも正直いいまして、体調の不良もあって、わたしはこの二日目、かなり「もう見なくていいかな」くらいの気持ちになっておりました。いやいやいや!一日目で、見たいものをぜんぶ見た、くらいの満足感があったのですよ。じゃあ、わたしが見たいものはなんだったかっていうと、要するに、いまの楠本柊生、だったわけですが。しかし同時に「宇宙と恐竜」自体も、もう一度見て、確認したいところはいっぱいあった。なにより、シオタニ氏のイラストがするすると描かれていく、あれを眺めているのは快感だった。ラストの逆回しでイラストから文字が現れていくの、あれが大好きです。
 元帥を見ることへの恐れはもう無くなっていて、それはまったりと嬉しかった。もし、今日の元帥が、あの蒼い髪と赤い唇(ぜひシャネルで)だったとしても、わたしはもう平気で「なつかしー」とにこにこ出来ると思った。それは向こうの意図した結果ではなかったかもしれないけれど、わたしはとても安心していました。
 
 一度見た目で見ると、構成の意図や構造がよりくっきり分かって、さらに面白いです。同じ話だけど同じじゃないのは、帝國で馴染みのある感覚です。元帥は本当にリミックスが好きなんだな。リミックスとオマージュと本歌取り。ああ、わたしが好きなのは当たり前ですね(ここ、あんまりはっきり書きたくないな)。なんていうかな、とても90年代な感覚。それが悪いのではまったくなく、むしろ嬉しい気持ちでそう思います。ただ、わたしは現在の元帥の活動をまったく目にしていないので、単なる勘違いかもしれませんが。
 今回の天野くんは、噛まないことに頑張ったせいか(それでもあちらこちらでいやその)、遊びたいのでしょうが、ちょっと空回りかなと思わないでもなかったり。しかしながら、「草食系男子」とか「どんなことでも?」とかポイントはしっかり押さえているあたりが頼もしいです。
 遊ぼうとしてやらなくてはいけないことが落ちてしまうのはシオタニ氏もいっしょだとよく分かった。そして9×9さまのチェーンが、一日目から危うかったのだけど、さらに大変なことになっていた。あれ、カッコいいけど、すぐからんじゃうのでしょうね。
 そして、今回。シオタニ氏が元帥の髪を青でさっと塗ったときも、あれだけ昨日のトークで髪を蒼くできなかったことを悔やんでいた元帥が、今日はどんな髪で出てくるのかな、としか思いませんでした。よしんば、あの見慣れた蒼い髪であったとしても、登場曲がキリエであったとしても(やっぱりスーパーマンだったけどね。どうしてここキリエじゃないんだろう)、わたしは動揺しないと思っていた。もし、わたしが、撃ちぬかれるとしたら、あれは昨日の、あのタイミングでなければあり得なかったと分かっていたから。
 しかしながら。いやもう、しかしながら!出てきた元帥が、青い髪のヅラ着用であったときの、わたしの心中をお察しください、みなさま。これは別の意味で撃ち抜かれたよ!ていうか、それ、どう見ても綾波だろ!髪型いっしょだよ!そりゃ近くにまんだらけはあったけどさ…。力なく笑うしかありませんでした。ある意味、これが昨日でなくてよかった…のだろうか?それからはさらに肩の力を抜いて楽しむことが出来たと思います。笑っちゃったからねえ。
 けれど、終了後。真夜さんに云われました。
「あのさ、くさてるん。さっきから云ってる、『解放された』だの『憑き物落とし』だの、それ、オレたちに最後に元帥が出たときも云ってたから。あのときと、そのまんま同じこと云ってるよ」
 顎が床に落ちるかと思った。
 あああ。云ってた?わたしそんなこと云ってた?……云ってた。つまりわたしは一度、解放されたと思ったものの、気づかないうちにまた、あの存在を求めて呪縛されていたというわけ?じゃあ三年に一回、元帥を見ないといけないな。それなんて解毒作用(違)。そのときには、さすがに己の内に巣食った、楠本柊生という存在の大きさに打ちのめされた気がしましたよ。なんかもう、勝ち負けでいえば、こっちの負け。でも、どこか笑ってしまう、負けでありました。
 だって、「宇宙と恐竜」は楽しかったもの。それで十分です、きっと。
 終了したのは昨日とほぼ同じ時間。取り急ぎライブ会場を出て、車で帰るお二人と別れて、新大阪へ。あわただしいけど、充実した二日間でした。行ってよかったと思います。名古屋の臣民さんのなかで、もしかしてわたしと同じような呪縛にとらわれて、いまの元帥を見ずにすませているかたがおられたら、わたしは、よろしければ、そろそろ見てもいいんじゃないですか?とおずおず、声をかけたく思います。見れば、答えはきっと出るから。答えが出なくとも、時間をとめたままでいるよりは、きっとなにかが変わるはずだから。
 でもまあ、あれこれ考えずとも、十分に楽しめる内容であると思います。元帥のみならず、天野鳶丸氏やシオタニ氏のファンなら、こたえられないものがあるのではないかしら。興味があるかたはぜひおでかけをお勧めいたします。

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